ニート考

 NEET(Not in employment, educational or trainning、たぶん)すなわち、働かない、勉強しているわけでも、訓練しているわけでもない人たちがこの日本に85万人いるという。
 ガイアの夜明けでもやっていたが、番組としての結論は「ニートは、年金問題、赤字国債など大人たちがこれまで先送りにしすぎたつけが回ってきた。これからの日本が心配だ」である。私も正にその通りだと思う。ニートを支援するNPO法人の理事がこの番組で語っていたが、「大人の働き方が貧しすぎた」こともニートの一因になっている。親が会社の奴隷状態で残業残業で家庭と接する時間もなく、気付いたらリストラされていることはめずらしくもない。会社都合で振り回されて親は人生を台無しにされた、と子供は了解するだろう。そんな子供が、どうして「給与所得者」「正社員」になりたいと思うだろうか。
 政府がニート対策で数百億円規模の予算を付けたというらしいが、それは私に言わせると無駄に終わる。なぜならニート対策ということ自体が、問題の対症療法に過ぎないからだ。企業の経営者の意識や、社会システムを何とか変えない限りは、ニートは増え続ける。「企業の経営者の意識」「社会システム」を変えるのが、これまた不可能に近い。企業といっても数百万社あって、その経営者を一度に洗脳するなんてあり得ない話だ。また、社会システムはいまの縦割りの、保身を旨とする行政システムではとうてい変えようもないだろう。
 番組に登場するニートたちを見ていると、彼らはまったく機能を損なっているとか、そうしたこともない、じつにまともで折り目正しい好人物である(もともと取材を受諾するほどのキャラという底上げはあるにしても)。彼らをしかし励まして働くようにしても、その受け皿はたぶん相変わらずの「貧しい働き方」を社員に強いるような会社が大部分に違いない。または低賃金、低未来、肉体労働の派遣とかパートに限られそうだ。
 ニート→国力低下→円安といったヤバイ状況にならんと経営者の意識や社会システムはかわらんだろう。もっともそうなるとやばすぎて現行の経営者や官僚機構は滅びて、まったく新しい人たちが代わりに台頭する、そういう劇的な代わり方になる気がする。
 当面のニート対策をしたいのならこういうのはどうか。あるニート対策の学校が、ニートに便所掃除をさせたり、料理を作らせたりしているのにヒントを得たものだ。まず、ニートを抱える親の勤め先企業は、その親とニートの息子を1年だけ交代させる。親は家でニートとして過ごすのではなく、便所掃除をしたり料理を作ったりしながら「社会復帰」をめざし、アルバイトなどに出かけなければならない。ニートの子供を迎え入れる企業は、その親が社員としてやっていたことができるよう、何人かのスタッフを専属で付けて補佐する。しかも奴隷社員としてではなく、お客さんとして丁寧に扱う。
 そういうことをすると、ニートの子を抱える親は会社に逃げることができず、それどころかニートそのものの気分を味わうことができる。また、子は、スムースに社会参加ができるのである。このプロジェクトの趣旨は、親子のコミュニケーションの復活だ。
 まあ冗談にしても。
 なんでもものは中庸でないといけないと中国の故事は教えている。ところが日本社会というのは、特に高度経済成長を通して、またバブル後の不景気を通じて、メチャメチャやりすぎたんだろう。最初に戻るが、そのつけが回ってきて、ニート、ニートというのは結局親がいて、その親の子供であるわけだから、原因は親、ないし親の世代にあるというほかはない。
夏休みはニートだった、市川哲也
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ニート考” への1件のフィードバック

  1. 本当ニートが社会問題になる事自体が可笑しい話ですよね。仕事も目的も持たない=(怠け者)見たいな構図をそのまま問題として取り上げる事自体が他人に対する充て付け論にしか聞こえませんです。大事なのは今悪い病気を高い薬や治療(つまり金や専門家を出せば)治ると思っている社会自体が病んでる事に気づくべきですよね。正に泥棒が泥棒に説教する様な、、矛盾も良い所ですよね、、

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