リビドーの充足と渇望

 人間にはリビドーという、性的エネルギーがあるというフロイトの発見は非常に重要だと思う。その事実を直視し、認識しないと不自然なことになる。
 たとえば人はなにか行動をするというのは、極論すると、そうするのが気持ちいいからである。生物学上の要求から飯も食うし、寝るし、背中をかいたり、本を読んだりするのだ。そうすると気持ちよく、欲望が満たされる。欲望が満たされて気持ちよくなるから、繰り返し飯を食うし、背中もかくし、本も読む。
 そしてラバーも着る。
 これは自然なことである。ラバーを着れば、非常に気持ちよく満たされ、これ以上のことはないとばかりの至福の感情に包まれるのである。それを求めて、人は繰り返しラバーを着たがる。着ればまた気持ちよいから繰り返す。その根底にあるのは、性的な快感である。性的な快感こそ、私は人のすべての行動の基本だと信じている。
 結局私がリベラルなのも、性欲が基本だと思っているからである。それ以外は、まるで「神がすべてを創りたもうた」みたいな非科学的態度に思えてしまい、バカげてるって思っちゃう。神がゼロからなにかを生み出すというのは科学的な態度ではない。なぜなら物質の質量というのは総和が決まっていて突然ゼロから発生したりはしないことが300年以上前ラヴォアジェという人が見つけて以来分かっているからだ。
 性欲というのは日常では抑圧されているけれども、思いっきり満たしてあげないと変なことで爆発する。それが消えるということはない。フロイトのリビドーの考え方である。性欲をなくせというのは人間が生物である以上はあり得ない。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com
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