短期と長期のちがい

 短期と長期では何が違うのだろうか? 一番の違いは、そのリスクの大きさにあると思っている。短期でエイヤッとものごとに取り組んでうまくいけば、結果としてうまくいけばうれしいし、失敗するとカナシイ。感情のブレが、短期ではより大きい。それに対し、長期だと、やってもまあ刺激は少ない。達成されたことへの感興もそうだ。「これだけやってきたんだから当然」と冷静な心境で終わる。
 ここでのリスクは、達成されたこと自体から得られるプロフィットではなく、感情のブレの大きさの話だ。そのプロフィットでいえば、短期は長期よりも自ずと小さいものにならざるを得ない。
 ニートや工場の請負が問題になっている。シャープ亀山工場謹製の液晶パネルを搭載した薄型テレビが家電量販店の店頭に並んでいる。「シャープ亀山工場」と記してあるシールがパネルの前面に貼ってあるところをみるとどうもメーカーとしては誇らしげなものであるようだ。国内製だということをうたって品質の高さをアピールしたいのだろう。
 亀山工場ではシャープの正社員のほかに、請負から派遣された派遣労働者も働いている。彼らは時給で社会保険はない。シャープは、派遣労働者への時給として請負業者へ1500円払う。請負業者が500円取り、労働者は1000円程度もらう。労働者は健康保険と年金は自分で何とかしなければならない。つまり、国保・国民年金にはいるのである。
 シャープはもし、派遣労働者を社員として雇うならば、厚生年金や健康保険料として支払う賃金のおよそ10%を負担する必要がある。雇用保険と労災保険料も負担することになる。それがイヤだから、割安な労働力として請負を使う。
 そうやって安い労働力を酷使してやっと「シャープ亀山工場製」と偉そうなシールを製品に貼れる。そういう製品を作る人たちの将来はあったものではない。
 もちろんそういう製品を作る人たちは、一インチ一万円といわれる薄型テレビなど望むべくもない。薄型テレビはおろか生きる希望さえどうなんだろう?そんな雇用環境のなかで、結婚して子供を産んで、という絵をどうやったら描けるのだろうか?
 描けないだろう。
 高齢化社会で、あれこれ統計もでてきていてどんな人生ならどれだけの金が要るかとか、どれだけ幸せになるか、というのが見えてきた時代。人生を長期で考えなければならない時代なのに、企業はこぞってヒトを短期短期で働かせようとする。
 アエラ20050606の記事によるとアマゾンの市川の倉庫では、100万冊のなかから時給900円のアルバイトのヒトが1分3冊くらいのペースで本をピッキングするように、コンピュータでウォッチされている。一分1.5冊、などとノルマに達しない場合、警告される。なおアマゾンであるジャーナリストが潜入取材をして書いたルポはアマゾンで買えます
 ニートはある意味賢い。ちいさく区切られた時間で人間がもののように使われるシステムに組み込まれる前に、長期的視野に立ってこれからの人生をどうしようか考えているかも知れないから。何も考えていなかったり、考えかたを知らない人もいるかも知れないが、なにかのきっかけで短期のシステムに組み込まれれば、自ずから何らかの考えが浮かぶだろう。
 わたしは当時一流とされていた早稲田大を卒業して(そこしか内定もらえなかったので入社した)とある無名企業の工場に配属になってはじめて、猛烈に頭を働かして考えた。こりゃやばいこんなはずじゃなかったと。
 一番思ったのは、自分の人生が短期でどんどん消耗されていると言うこと。なにか長期的な視野にたつこと、長期的な投資がしたかった。たとえば大学院で勉強とか、資格を取るとか。工場とかで一日中過ごすと、マジで強烈にそう思うものだ。実行に移していないところをみるとどうも現実逃避にすぎなかったようだ。いやーしかしあのときほど心底「勉強してー」と思ったことはなかったな。はははー。
※お知らせ
Demaskお取り寄せしますよ。サイズチャートも載っけました
※訂正
先日ウィルコムのメールは広告メールが付くと書きましたが、オンラインサインアップ時の設定で「お知らせを付ける」をonにすると広告が付く、の誤りでした。offにすれば付かないということです。また、auは速度が速いというようなことも別の日のブログで書きましたが、DDIポケット(現ウィルコム)の実証実験では、必ずしもそうならないようです。つまり一定の範囲内でどのくらいの人が使っているかによって実効速度が変わるようです。windfolaさんのご指摘で分かりました。windfolaさん、ありがとうございました。
勉強嫌いの市川哲也
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