著しい少子高齢化

 15歳から49歳までの女性が一生のあいだに平均何人の子供を産むかを示す合計特殊出生率2003年のデータが発表された。1.29人である。2.1人を下回る国は人口が減少する。
 「出生率が過去最低を下回り続けている」
 これはもう慣れっこのことであるが私たちの年金や、経済活動においてたいへん深刻な問題をもたらす。長期的で見ると、国に起こる問題のうち戦争や重大事故に並ぶ重大さだと思う。
 日本の出生率低下の特徴は、次の二点において他の国と際だっている。
1.他国の数倍のスピードで進展
2.底打ちせず一直線に下落
 いろんな原因がいわれているが、子育てが苦労も多く見返りもじつはそれほどないこと。また独身や子供なしの「自分たちの人生」がとても魅力あるものになってきている消費社会の成熟などがあげられる。
 また経済が低迷し、正社員は忙しすぎ、非正社員は所得が少なすぎで子育て環境は厳しさを増す一方だ。
 ゲームやエンタテイメント産業がいわゆる「男らしさ」「女らしさ」に縛られない自由な発想で作品作りをした結果、人間本来の持つ生殖能力が次第に見失われがちになっている国民の総オタク化現象も見逃せない。
 さらに、マスメディアは子供を産んだ人がどれだけ幸せかを報じるよりもはるかに多くの時間を「どれだけ悲惨な目にあっているか」報じることに力を入れている。他人が産んだ子供の悲劇はたいへん視聴率によく作用するようで、短期的にスポンサーとテレビ局の懐を潤す。子供がひどい目にあった親は、まずそれ自体悲惨だし、さらにメディアのネタにされて二重に悲惨である。これではたまったものではなく、ますます子供を産みたくなくなる。
 そうは言っても、平均でひとりは子供を産んでいることは確かである。つまり、子供は少ないが、いるのだ。ひとりを上回っているということは、少なくとも全員がひとりは産んでいることを否定しない。
 ひとりで精一杯、それは筆者の実感である。ちなみに憲法と民法では、子供に対して親は当然に扶養する義務があると規定している。子供を産んだ以上、適当なことをしていては法律違反となってしまうのである。ただし、民法は、その子供が今度は親を扶養することも義務づけている。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com