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感覚統合とボンデージ

感覚統合とボンデージ
過剰な拘束感がもららす安寧。感覚統合を促す効果がある?!

私は小さい頃から、ぎゅーっとされるのが好きでした。重い布団。弟との「ウルトラマンごっこ」での圧迫。そして全身をぎゅーっときつく拘束する全身スーツの着用。

いろいろネットを調べてみた結果、どうやら私は自閉症スペクトラム障害の一種で、感覚統合がうまくいっていないらしいことがわかってきました。

感覚統合というのは、一言でいうと、外部刺激を受けて、脳がどう、身体反応すべきか指令を出す、そのプロセスのことです。こういう説明はわかりにくいですよね。感覚統合がうまくいかないと、以下のような「症状」が出てきます。

・跳び箱がうまく跳べない、運動ができない
・不器用
・集中力が欠如する
・気が散る
・KY

これ全部私該当しますね。不器用という部分ですが、すぐものを落としたり、ぶつかってしまったりとか。跳び箱、飛べたことありません。水泳も25メートル泳ぎ切ったことがありません。気が散ってしまい飽きっぽくて長続きしません。

会社勤めとかも飽きてしまって転職ばっかりしていました(最後は自分で会社を作りましたが、事業目的は多岐にわたって迷走中です)。会社勤めが続かないのは、会社のせいにしてきましたが、実は自分の自閉症気味にも問題があるのではないかと今は思います。

それで、10代後半から自分の体をぎゅーっと締め付ける様々な手段を試し始め、程なくしてラバーフェチに出会ってこれだと思いました。

しかし、私がもっと早いうちから、ラバーフェチではなくて「感覚統合療法」に出会っていたらどうでしょうか? 感覚統合療法というのは、感覚統合がうまくいっていない子供に施す様々な外部刺激を通じた機能発達支援の実践療法です。わかりやすくいうと、「ブランコやハンモック、ボルスタースイングなどの遊具で楽しみながら脳みそを鍛える」訳です。

スウェーデンではチェーンブランケットという、重さが12キロもある掛け布団が、感覚統合療法の治療器具として販売されているのです。また、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)で有名なハグマシーン(グランディンが開発)も、感覚統合の機能発達支援に役立つとされています。

実際のところ、「感覚統合療法」というのは本当にそれが脳の発達に有為に効果があるのか、私にはわかりません。また学会にも異論があるようです。しかし、感覚統合療法など知らない、ティーンエイジャーの私が、ボンデージをひたすら志向したところを思い起こすと、脳を発達させ機能回復に役立つかはわからないものの、短期的には何らかのいい作用(落ち着くとか、気持ちがいい、安心できるなど)をもたらすことは間違いありません。

それに、感覚統合機能のトラブルを抱えると出てくる症状の一つに、「過剰な痛み感覚を求める」というのがあります。これは気になりますよね。何しろボンデージとSMは不可分の関係にありますよね。SM、過剰な痛みへの志向、縄がくい込むことの快楽。これは、医学的には単に感覚統合機能がうまくいっていない人の「症状」の一つだととらえられているのかもしれません。

残念ながら科学的にはなぜ、痛み刺激を求めるのか。それによってどのような解決がもたらされるのか。そのメカニズムや因果関係はわかっていません。しかし、今日も世界中で、一人自分の体を締め上げたり、痛みを求めてSMKラブの門をたたく紳士淑女がいるわけです。

その欲求はきわめて強いと思います。1ヶ月に1回程度は何らかのラバーボンデージのプレイをしないと、何となく落ち着かなくなり、不安になります。そしてラバーを着たいという欲求が抑えきれなくなるのです。おそらく私が死ぬまでそうでしょう。

ラバーボンデージの「よさ」は脳に満足感をもたらしますが、その満足感というのは、日頃バラバラになって機能していない感覚統合がしっかり機能していると一時であれ錯覚できるのがその理由であると思います。
自分の脳が、感覚に対して適切に反応できないという状態が続くと、何らかのストレスや「不安感」「違和感」が蓄積されるはずです。OSにバグがあるパソコンが不安定になるようなものでしょう。快適に生きていくためには、そのバグを治癒しなければなりません。私が日々実践しているラバーボンデージ体験こそ、その治癒の活動そのものなのです。

私は仕事の都合で、「脳」について詳しく調べたことがあります。脳の仕組みや働きを学べば学ぶほど、自分の性癖=ラバーフェチが、脳の機能の何らかの不都合を埋め合わせているんじゃないかという思いは強くなります。自分の脳、多少自閉症気味なんですが、これがなぜ、こういう異常なのか。これは決定的な理由は不詳ですが、環境ホルモンや各種汚染物質の母胎にいるときの摂取などが疑われています。

そして、今こうした異常と共に生きている私たちは、同じ異常を抱えている人と、ラバーフェチ」という性癖、そして今回の感覚統合の問題などを演繹的に考えれば、今生きづらさを抱えている人たちは、もしかしたらラバーボンデージの体験からちょっとした安寧、癒やしを獲得できるといえます。

ラバーフェチを単なるキンキーなファッションへの耽溺とか、変態プレイだとか、そういうスティグマを貼ってはい終わりとしていたら、何の社会的教訓や実践も得られません。スティグマや偏見は、思考停止をもたらし、文明の停滞につながるのです。そうした見方をやめて、ダイバーシティーをまず受け入れ、なぜそうなのか、を考察して必要な実践を繰り返すことこそ、この世の中を少しでもよい場所にして、生きやすくすることに、ひいては文明の進展につながると確信しています。

感覚統合について詳しくはたとえば「感覚統合入門」をご覧下さい。

労働フェティッシュ

amazon

同じネット通販事業者としてAmazonの動向をいつも気にかけています。Amazonは巨大な倉庫に、大量の商品を陳列し、廉価で使い捨ての、社会保険も無しの労働者に端末を持たせてピッキングしています。在庫があるということはその商品が完全にコモディティー化している、ありふれていて、どこでも手に入る。購入者の意志決定は、価格か、スピード(納期)ということになるでしょう。
巨大倉庫内で働く人たちに遅刻のようなシステム想定外のミスは許されません。遅刻は記録され、ポイントが一定の数まで減ずればクビになります。倉庫内の労働環境は劣悪とはいわないまでも、非人間的で快適ではありません。夏は非常に暑く、会社は倉庫の外に救急車と医師を待機させています(休憩を増やしたり、水分補給をするといったことではなく、ダメになったら取り替える発想なのです)。冬は非常に寒いのはいうまでもないのですが、端末が示す、次にピックアップする商品の位置までの許容時間が秒単位で表示されるので、走らないとならず、すぐに汗だくになります。そして、極端に乾燥しているため、スチール製の棚に触れると、日常生活ではおよそ未体験の静電気が容赦なく労働者を痺れさせます。まともな神経の持ち主であればすぐに辞めてしまうのでしょうけれども、辞めても、仕事を求める労働者が列をなして待っているので会社は何とも思いません。訴訟のリスクにおびえながら、限られた少数のジャーナリストがたびたびこの巨大企業の倉庫に潜入し、文章で告発しているのは、この企業が、従業員として関わった人間の暮らしや尊厳を破壊するシステムであるという疑いようのない事実です。
この宇宙が、世界が、黒か白かの二択に収斂していくプロセスであるならば、Amazonみたいな哲学が世界を覆うことに異論の余地はありません。しかし、残念ながら世界はそのようには出来ていないのです。宇宙が、137億年前のビッグバンから始まって今もってなお、拡散・膨張を続けていることからも明らかなように、世界もまた複雑さの一途をたどっています。
ALT-FETISH.comも倉庫のようなショールームに商品があって、そこに、端末が示す商品をピックアップし、梱包発送するという仕事がメインという点ではAmazonと変わりありません。しかし、すぐに品切になる。棚は秒数を問われるほど離れていない。走れるほど広くなく、エアコンは完備されている。品切が多いので、そもそも棚に行く頻度も少ない。このようなかんじで、合理的に考えるとAmazonとは似ても似つかないグダグダなダメ小売り事業者です。
しかし、Amazonよりも優れているというか、誇れることがあります。それは、私らALT-FETISH.comは従業員を使い捨てにしません。従業員=事業創始者だからです。そして、経営者は現場で、この13年間、創業当時とおなじことを繰り返しています。発注して、検品して、受注処理をして、ピッキングして、発送する。変わったことといったら、取引先が増えたりした程度でしょう。
13年間、誰にも注目されることなく、ひたすら同じことを続けられる環境を持つこと。仕事は暮らしのためであって、暮らしを破壊するようなものであってはならないでしょう。