建築モノにハマる

 最近テレビではよくリフォームや新築といった、個人住宅をテーマとする番組が定期的に放映されるようになった。
 筆者が楽しみにしている主な建築モノは次の三つ。
1.渡辺篤史の建もの探訪(毎土曜午前9時半テレ朝)
2.大改造!!劇的ビフォーアフター(毎日曜夜8時テレ朝)
3.完成ドリームハウス(毎日曜夜9時テレ東)
 取り上げられる物件はほとんどが建築家の手による「作品」である。建築家が関与するということは、建物本体価格の10%という金額を、建築家にデザイン料として支払う必要があることを意味する。たとえば建物本体が3千万なら、建築家に300万円を払う。すると総支払額は3300万円となる。
 300万というとちょっとした車がポンと買える額である。これを払うかどうか、私が家をリフォームしたときにはちょっと悩んだけれども、ケチケチ根性がはたらいて止めた。建築家がやること(間取りや建材の選択と工事監理)などこの情報化時代に、自分が出来なくてどうするという筆者の変なケチケチ根性だ。
 結局止めてどうだったかというと、自分が死ぬほど細かくリフォームの進行を管理してはじめてまあまともなものができあがった。それでも出来は80点くらいか。
 筆者は、地元にあるそれなりに大きな工務店にリフォームを依頼したのだが、基本的に地元の工務店の担当者、とくに現場監督はなかなか施主側の考えや、こうしたいああしたいということを分かってくれない。言えば首肯するけれども、いざ工事が進行する過程で、すっぽ抜けたり、位置が違ったり、そんなの全然平気である。
 一番重要なのは工事前の打ち合わせでいかに設計図を練りこむか。設計図段階での打ち合わせは、最低でも30回はしたほうがいい(もちろん数が問題なのではなく、その質)。
 そしてその設計図に基づいて、家は造られていく。実際に工事がはじまったら、設計図どおりにほんとうに、きちんと家が造られていっているのか施主は逐一、毎日、午前と午後、チェックしたほうがいい。
 こんなコトがあった。収納建具を建具屋さんが作ることになっていて、できあがって搬入されたものを見て仰天した。天井まである建具のはずが、天井よりも10センチ低かった。このため、建具の上と天井のあいだに空間が生じている。これ何?と言ったら、建具屋は、「いや、このほうがいいと思って」。……そんなバカな。「設計図どおりにして!施主の言ってることだよ。作り直してください!」私は、父親くらい歳が離れているその建具屋のオッサンと、同い年ぐらいの現場監督に、青筋を立てて怒鳴った。もちろん作り直しになった。
 また、こんなコトも。工事完成後に上がってきた請求書を一点一点見ていくと工事していないのに請求書に入っているものがいくつも見つかった(工事進行過程で施主都合でキャンセルしたもの)。その額、140万。もちろんその分は請求書から減額である。
 現場にいる人たちは、日本語が通じる現場監督を除いて、あとは職人さんたちだ。なにか気がついたとしても、職人に直接言うのは厳禁だ。必ず現場監督に言うこと。したがって、現場監督が毎日来ない工務店は絶対に契約してはいけない。あと請求書も分かるまで徹底的に読み込もう。ネットでググればいくらでも資料は出てくる。
 施主代理人である私が発したファックスの数は工事開始から支払い終了までの半年間でなんと30枚に及んだ。
 もちろん会社務めしている人など普通の施主は、こんなマネはできないだろう。そうなってくると、一生に一度の買い物である。よい建築家に、数百万払ってもあながち間違いではないと思う。
 話が自分の体験談にずれてしまったが、民放の建築ものは本当におもしろい。筆者はじつは廃墟も好きである。民放の建築もの、特にビフォーアフター。そのビフォーがまさに廃墟同然の物件ばかりで興奮する。
 それをぶち壊して、洗練された建物が建つ様子、下らない生活用具が一切無くなってしまう不思議な「アフター」は毎回鳥肌が立つほどの感動だ。
 また、その過程、工事のドキュメントも、筆者がコミットメントしたリフォームの、あのつらくも感動的な日々を思い起こさせてくれて毎回胸が熱くなる。
 フェティシストにとって建築物もおそらくその対象に入ってくる人が多いのではないかと拝察する。
 話は変わるが、今月最初に発注したラバーキャットスーツは、本日発送することが出来た。お届けまで2ヶ月かかるということが原則だが、タイミングによってはこのようにひと月かからない。今後もこまめな発注により、納期の短縮に努めていきたい。海外メーカーのインセンティブはなんといってもこまめな、そして多額の発注によって刻印される圧倒的な存在感だ。日本のフェティシストのバイイングパワーを見せつけてやろう。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com