反社会学講座、仕事・家庭以外に持つべきものは?

 『反社会学講座』はパオロ・マッツァリーノという、立ち食いそば屋でバイトしながら大学の講師をしている不思議なイタリア人の書いた本で、イースト・プレスから今年6月に初版が出ている。
 この本一冊中断無く3時間で読んでしまった、それくらい面白い。講義録みたいな形なので、しゃべり口調で分かりやすい。なんでこの本を買ったかというと学生時代に(マスコミへの内定率の高さに引かれて)社会学科に行きたかったんだけど単位を落としたので哲学科へしか進めなかったという私のコンプレックスかな。この本を読んでへーって思ったことを手短に。以下では、★以降に一般的に言われている現象を述べ、→のあとにこの本の解釈・主張を。
★子供の犯罪が増えている→誤り。昭和30年代の子供に較べ、凶悪犯罪を起こす人の数が4分の1に激減しているのが、いま。
★子供がキレやすくなった→実際は団塊世代のほうが危ない。JR東日本の調査で、駅員などに暴力をふるって事件を起こした最も多い年代は50代。理由は「カッとなってやった」(つまり、キレた)が圧倒的に多く、日頃の「ストレス」からついやってしまったというのをはるかに凌ぐ。そもそも凶悪犯罪を最も多く起こしていた世代がいまの50~60代。これから彼らが退職して世に放たれることになると、ゾッとする。ぶるぶる。マスコミで管理職クラスになっているこの世代が、自分たち世代の凶暴さを隠蔽するために意図的に子供が切れやすい、子供が危ないと騒いでいる節がある(幸い長崎では少女殺人という格好の「ネタ」が……)。
★パラサイトシングルや引きこもりが日本を滅ぼす→正しくは、「大家」を滅ぼす。パラサイトシングルが働くというのは実家から出て一人暮らしをはじめる必要がある。そうするとアパートマンションを借りないといけない。その賃料収入は金持ちの大家の懐を潤す。逆に引きこもり、パラサイトが増えると、彼らの物件の借り手が減るので収入は減る。だからパラサイトは大家を滅ぼす。
★二世は不公平→誤り。ほとんどの二世は無能でバカだから、むしろその家を滅ぼし、別の家にチャンスをまわす結果になる。だから二世こそ、世の中を公平にする重要な役回りを担っている。
★都心から子供が減った→誤り。荒川区、江東区のマンション建設ラッシュなどにより、都心へのファミリー層の流入が顕著。一平方メートルあたりの子供人口密度は東京、大阪、福岡など大都市が最も多い。ちなみに世界で見ても日本の子供人口密度は60カ国中12番目と決して低くない。
★少子化が日本を滅ぼす→言っている人たちは役人や銀行系シンクタンク。彼らは喪われた90年代の責任が自分たちにあることを知っているので、バレないように少子化のせいにしている。しかも少子化によってもたらされる労働力不足を嘆くときに、彼らが念頭においている「労働者」とは自分たちのような温々としたホワイトカラーではなく、工場や港湾、清掃現場、工事現場などでボロ雑巾のように安く使われる単純肉体労働者。自分らはできればやりたくない仕事だからよけい必死の形相になる。
★少子化のせいで年金は破綻寸前→破綻に追い込もうとしているのは子供を産まない国民ではなく、年金を管理する役人。年金用に国民から巻き上げられた金は政府役人の天下り先である年金資金運用基金という特殊法人にいる無能な役人(運用失敗しても年収2千万、退職金2億円)どもによって蝕まれている(誰も使わない保養所とか、株の運用損などで数百億がパーに)。
 ……はあー。おつかれ。市川としては、前々からブログなどで政府役人大企業のひどい仕打ちに抵抗するためには、子供を産まないこと以外あり得ないと主張してきた。少子化で日本はダメになると言ったことはないけど、似たようなことは言ってしまった気がする。年金もやばいとか言って。でも考えをあらためた。いまの世の中のあらゆる問題と少子化とは、因果関係が必ずしも認められない。
 ここで考えられる有効な生き残り策を提案。
1.生活保護を申請する。この場合、子供はいてもいなくてもいい。
2.赤字企業を保有し、妻や子供に法外な報酬を支払う一方で従業員は安く使う。
3.公務員や大企業などメインストリームへ送り込むように子供に徹底的に投資する。
4.実家に帰って猛勉強をし、弁護士、医学部入学、会計士、不動産鑑定士、弁理士などで学歴ロンダリングを図る。
5.大人数で世帯を構成して、世帯ごとにあれこれかかるあやしげな税金の軽減を図る。
 ここでトーンダウン。もっとましな、おもしろおかしいふざけたものではなく現実的なアドヴァイスを。
 仕事、家庭、そしてもう一つ、遊びという要素をもって日々を暮らす。その遊びは何だっていいと思うけど、気持ちが入り込めるなにかを。そうすれば、何がいいかというと、ずばりリスク軽減がはかれる。仕事、家庭ってダメになったときのダメージがとてつもなく大きい。それに仕事がダメになると家庭もダメになる、みたいに、相互に引きずりやすい。そこでもう一つ、遊びがあれば、ね、そこで救われる。遊びっていうのは字義通りではなくて、副職とか、浮気とか、竹細工とか、犬の世話とか何でも言い。
 もちろんAlt-fetish.comの読者には、目眩(めくるめ)く素晴らしきラバーボンデージの快楽を!
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com

反社会学講座、仕事・家庭以外に持つべきものは?” への1件のフィードバック

  1. 今日は、晃子です。初めてパソコンで手紙書きました。お店からですけど・・・。何時も為になる書き物お疲れ様です。後でちゃんとメールします。不慣れなもので時間ばかりかかっちゃいます。マダマダですね(笑)。

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