どうしたラバー・ブレイン

 日本のLGBT、特にフェティッシュ系(のイベント)をリードしてきたこのサイトで、今年はじめから「管理人」YU氏の異例のコメントが掲載されている。「私、サイト管理者 YUはこの分野に関して既に活動のピークを過ぎたと感じており、色々な意味で従来のようなサイトを続けることに対して限界を感じたからです」(サイト上での「私」の主張が原因となり)「一部に誤解や、様々な軋轢などが生じてしまう危険性も考えなくてはならない程、影響が大きくなってしまった」などと表明、ギャラリーを除く主要なコンテンツのほとんどが終了してしまった。
 このサイトはフェティッシュ系では主要な人物へのインタビューや、個人輸入の方法など、フェティシストにとってはバイブルともいうべき、丁寧で、共感があふれる素晴らしいものであった。また最近では積極的に女性フェティシストを起用したモデル撮りなどもしていて、期待が膨らんでいた。それがこのような結果になったのは残念でならない。
 ただ、トウキョウパーヴというイベントは今後も引き続き行われるようで、チェックしているヒトは一安心だろう。
 同じフェティッシュコンテンツをサイトへ供給している立場で考えると、フェティッシュコンテンツのいちばんの難しさは、「エロ」と「カルチャー」のバランスの取り方である。ラバー・ブレインはもちろんカルチャー系であると私は解釈しているのだが、見る人によってはエロを感じてしまうかも知れない。
 受けての印象と発信する側の考え方の相違が大きくなると、けっこうつらいものが出てくるのではなかろうか。変な要望も寄せられるかも知れない。読者と作り手の意識の、意図せぬ差違の拡がり、こうした不快な差違を単なるノイズととらえることができなくなる何らかの事情が生じたら、サイトは閉鎖を余儀なくされる。YUさんは個人だしまたイベントで多くの人とコミュニケーションをとる機会があっただけに、さまざまなリスクにさらされていたのに違いない。
 それでもYUさんはエライ。当面は「極、マイペースで運営させていただきます」───サイト自体を閉鎖することだけは避けているからだ。
 ぜひ、YUさんには、これからも続けて欲しい。そして続けるにあたって僭越を承知の上で私なりにアドヴァイスさせてもらうとしたら、できるだけエゴイズムに徹しろという点だろう。変に「パブリック」を意識したコンテンツにするよりもよほどそのほうが作りやすい。それに、エゴを見せつけられると人は黙るほかなくなる。
 おそらくYUさんはそうしたことに早くも気付いているだろう。それは「マイペースで運営」していこうという意気込みを表明した部分に現れている。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com
info@alt-fetish.com