TokyoPerveリポート──強い訴求力を持つ外観の問題

今日の話題
[ 1 ]TokyoPerveリポート
[ 2 ]MARQUISのフェティシストアンケート抄訳
[後記]アメリカ新大統領誕生
[ 1 ]TokyoPerveリポート
 広告手法のひとつに「ティザー広告」というのがあります。ティザー広告は、たとえばDMなら、封筒に印象的な写真や、意味深な言葉を載せて受取者の関心を引きつけ、中身を開封させるとか、マス媒体なら、価格や具体的な商品名を伏せ、何か斬新な映像や断片的な情報のみを流して話題を喚起し、一定の時期に一斉にその広告で販売したい商品やサービスの詳細を流すというような手口です。
 この広告手法の狙いは、ティザー、つまりみるとヨダレが出てくるような「そそられ感」を演出して、消費者の意識を引き寄せることです。背景には、従来のように、商品やサービスの価格や詳細をいきなりダイレクトに訴求しても、食傷の消費者を引きつけることができなくなっているこの消費社会の成熟飽和状況があります。
「本来、商業広告とは、広告主がある商品やサービスについて、顧客が購入したり利用したりすることを促すために作成・流布させるものであるため、当然に、その商品やサービスについての名称や価格、性能、効能等を明記・明示し顧客に説明することとなる。しかし、類似の商品やサービスが他にあり、また商業広告が多く作成・流布されている中では、通常の広告では顧客の注意を引かないために、より派手な色彩、デザイン、音楽等の表現を用いて工夫を凝らすことになる。その発展として「本来あるべきものがない」表現は一見して奇異な印象を残すため、顧客の注意を引きやすい。そうして顧客の「いったいこれは何であろう?」という興味を喚起したうえで、ある日付以降に全てを明らかにしたり、ある操作(例えば封筒を開封、インターネットサイトでの会員登録、等)を行わせて、広告で伝えるべき要素を明らかにする。このように顧客はじらされることにより意識が能動的にその広告に向けられているために、広告の効果が大きくなると考えられている。」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「ティザー広告」)
 2008年11月1日(土)深夜、六本木で開催されたTokyoPerveに、ALT-FETISH.comはプレススタッフとして光栄にも取材を許されました。今回、取材にうかがった不肖、市川はTokyoPerveを取材してみてまずこのキーワード「ティザー」が思い浮かびました。というのも、厳格なドレスコード(服装審査)を経て入場を許されたゲストたちの服装や雰囲気、ふるまいが、まさにティザーに満ちていたからです。
 もちろん、前世紀初頭に「グレート・ギャッツビー」で描かれているようにパーティーという営み自体がティザーそのもの、ティザーの象徴でもあります。ギャッツビーは、恋慕する女性の気を何とか惹きつけようと、毎晩のように自宅の豪邸で豪奢なパーティーを繰り広げるのです。
 ギャッツビーのパーティーをティザー広告とするならば、その目的はものを販売することではなく、好きな女性の気を引くことという個人的な性愛の成就が目的でした。ところで、同じパーティーでも現代日本の東京で繰り広げられたTokyoPerve(以下、TP)では、やはり同じくティザー的な「そそる感」に満ちあふれているわけですが、その目的はなんなのでしょうか。これだけの空間を準備してたのしむ場を盛り上げる主催者の「目的」。そして夜を徹して決して快適とはいえないファッションに身を包み、踊る参加者の「目的」。いや、目的などないし、そのパーティー自体がそもそも目的そのものだとする解釈はもちろん可能だし、それでいいと思うのですが、そうすると過剰な「ティザー」が未消化のまま私のなかに残されてしまいます。ですから、この場を借りて考えることにします。
(以下詳細はこちらのページをご覧ください、ただし長いので。最後のほうに写真をアップしました)http://www.alt-fetish.com/cnts/media/081101tp/index.htm
※取材では、ALT-FETISH.comオリジナルデジタル写真集007[DVD] ALT-FETISH featuring sionのSionちゃんに取材アシスト&ライターをお願いしました。キャットスーツを着ていることから来る「疲労」でカメラを構える気力を失いつつある私を何度も励ましてくれたのは他でもない彼女です。彼女の感想文も同時に掲載しておりますので、ぜひお読みくださいませ。
[ 2 ]MARQUISのフェティシストアンケート抄訳
 MARQUIS最新号の44号巻頭記事で編集長のピーター・W・チェルニヒがユニークなアンケート調査の結果を報告しています。MARQUISのウェブサイトや雑誌の読者を対象にしたフェティシストの素顔とでもいうべきアンケートです。
 75パーセントが大学卒業と高学歴で、30代と40代で7割を超えています。広告を少なくして記事ページを増やせという意見や、記事についてはもっとハードコアなセックスを見せろとか、他の同類フェティシストの実態をリポートしろなどの意見が寄せられています。MARQUISのバックナンバーで一番人気のあったのは、No.32のビアンカ・ビショップがカバーを飾った号。読者は10年以上の年季の入ったフェティシストが半数以上。ラバーフェチであることをカミングアウト派と、絶対秘密派は半々くらい。モデルが古いという意見に対しては、フレッシュな新人をもとむと呼びかけ。サイト(www.marquis.de)が使いにくいという意見に対してはオンラインサイトの改善にはたいへんな時間と手間がかかると言い訳しつつも、今年の前半にリニューアルしたと。ただし、見てみれば分かるがありがちなペイパービューのサイトであるようです。2008年の夏以降のサブプライムショック、秋の世界金融恐慌により、著しく売り上げを落としているとピーターの妻は最近のメールのやりとりで私に愚痴りました。「でもまあ、私たち家族が何とか食える、バカンスにもいける、それくらいの収入は確保されている」とのことで何よりですね(苦笑)。
 日本のフェティシストのことを皆さん知りたいですか? 特にラバーフェティシストは服も高価だし、着て愉しむには時間と場所が必要です。ローンを背負い、長時間残業に苦しむ日本の「パパ」にはとうてい難しい趣味の世界です。
 前項のパーティーイベントに参加して思いましたが、日本のラバーフェティシストは人生をこのラバーに捧げてしまっている「高コミットメント層」と、あとは時間と金に多少余裕のある「高所得者層」というおもに2つの層によって支えられている気がします。高コミットメント層の方は就労や家族が、ラバー趣味に費やすエネルギーを奪わないよう、一定の割り切りラインをもうけてやりくりしているのではないでしょうか。
 ピーターのアンケートには、自分と同じ趣味志向を持つ人たちがどんな人たちなのか知りたいという、供給側のマーケットリサーチ的な意味合いがあるのはもちろんですが、この業界にいま起きている「沈滞」的なムードを何とか打破したいという気持ちもきっとあると思います。ピーターたちは、ウェブを使ったり、DVDの新作を出しても、以前ほどの売れ行きは見込めなくなったといいますから、何とかこのカルチャーの裾野を広げ、新しいファン層を開拓しなければという危機感を持っています。そしてその危機感は日本の私どもも非常に共感せざるを得ない状況があります。今回の金融危機の十月の売れ行きは対前年比で3割減と厳しいものでした。
 ピーターのフェティッシュアンケートの声には、「モデルが古い」というものがありました。同じモデルを使い続けるのは本当に難しいです。なぜなら、コスチュームのバリエーションが非常に狭いからです。ラバーをなるべくたくさんの「前回とは違う」人に着せる、とにかく人を変える、これがフェティッシュメディアに課せられた重要なテーマです。
 というわけで、MARQUIS No.44HEAVY RUBBER FETISH MAGAZINE No.24を本日より発売開始しております。発売が遅くなったことをこの場を借りてお詫び申し上げます。
[後記]アメリカ新大統領誕生
アメリカで初めての黒人大統領が誕生しました。いわゆる新自由主義者たちは、この選挙戦の一年前から、サブプライムローンというインチキテロ商品で自ら自滅してゆきました。もちろん世界中に大迷惑をばらまいた元凶たるブッシュが、ある意味オバマ当選に追い風になったことはあるでしょう。しかし、そうはいっても直前までは私は心配でした。4年前に意味不明の事態でブッシュが再選したインチキな国だから、何が起こるか分からないと思っていたのです。心配は杞憂に終わり、見事当選を果たしました。リンカーンの有名な一説の引用「人民の、人民による、人民の為の政治」とか、民主主義の勝利とか。私は本当によかったと思わずオバマ氏の当選演説に涙腺がゆるむのを禁じ得ませんでした。オバマ大統領が訴える「CHANGE」のはじまりに、今、世界中が本当に感動しています。新自由主義が終わり、資本主義の暴走はまもなく止められることでしょう。社会福祉、教育投資、富の再配分、必要なら規制をいとわない、速くてスリムな政府がこの日本でも求められています。
市川哲也/ALT-FETISH.com
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