いろんな営業観察記

 いろいろな「営業」があって世の中面白い。最近メールでは出会い系サイトの宣伝が質量ともに群を抜いている。「Re:先日のお問い合わせについて」「お詫び申し上げます」「ご存じですか?」「Re: Fw:お急ぎの件」など、とりあえず見てもらおうと必死のようである。専用のソフトでドメインで判断し、バンバン鯖で削除している。
 メールのように削除できないのが銀行の営業。投資信託を買ってくれとうるさい。連中は基本的に販売手数料で食っているから、ためしに意地悪く「販売手数料ゼロ円のはありますか」といってみた。すると目を丸くして、「そうした商品は一切ありません。お話ししている投資信託はオープン型でいつでも売り買いできますから」と、「~から」でつなげるには無理のある2文が帰ってきた。失笑するほかない。だいたい、以前投信で損をさせた客に、どのツラ下げてまた新規に投信を買わせようとしているのか。「以前買って損したものを、今のお客様のライフスタイルにあったよりよいものに替えてはどうかという提案です」「毎月分配型といって、毎月お小遣い感覚で現金が振りこまれます。お小遣い、お嫌いですか」ものは言いよう、か。紋切り型の営業トークが楽しい。「販売手数料ゼロ円、元本絶対保証の分配型を持ってこい」というものの虚しい。
 これは日経流通新聞で読んだのだが、レクサスというトヨタの新ブランドが面白い。全国各地に100以上の、レクサスショールームを百億以上かけて建立(こんりゅう)。床は大理石張り、クラシックが流れ、ホテルマンのように訓練された営業がメインの50代の顧客をもてなす。このトヨタの投資の腹は、バターのようにべっとりと「利益」を上乗せした鉄やゴムでできた動く環境破壊装置を、セルシオをヤン車にしてしまうような腐れ客種ではない、真に洗練された高額所得者に売るという算段だ。予想の倍売れていて今のところ大成功のようである。何しろレクサスといえば一台600万とかが普通の高級ブランド。営業も高級だ。
 ディーラー(スズキ)で今日、定期点検があったので行ってきた。電話がかかってきて点検が終わったからと言うから行くと、洗車がまだという。時間がないんで洗車はいいですと断ろうと携帯の時計を見ていると、「あ、ウィルコムですよね」と言って、「どうですかそれ、僕もウィルコムにしようかと思ってるんですよ」と、対応してくれた担当営業が言う(スズキではレクサスと違い、担当営業が洗車もする)。オタクな私は得意になって15分間、ウィルコムがいかに他社携帯と違い優れているか、や、新しい端末の話題についてしゃべり続けた。気が付いたら洗車は終わっていた。洗車している近くでの、寒風吹きすさぶなかでの立ち話。レクサスショールームではあり得ない話だ。途中、ホースの水も浴びて私の服も濡れたのだが、コレが不思議と腹が立たない。それどころか新型エブリワゴンについてあらかた吹き込まれる。これもまた、営業。
 電話もよくかかってくる。着物とか、お試し○○、教材、たたみなど。おばさんがすごいテンションでまくし立てるケースがほとんどだが、ひとしきり言わせたあとにこういうと驚くほど態度が変わってたちまち電話が終わる。「すいません、うち会社なんですけど」(別に会社でもなんでもないのにこういうと信じられないほどあっさりと切ってもらえる)。電話営業のターゲットは開くまで個人ということで営業のおばさんは仕込まれている。ところで昨日のはすごかった。いきなりテープの自動音声なのである。テープで、キャッチフレーズと社名を言ったあとにアンケートでございますと自動音声がいう。むろん瞬殺だ。
 電話といえば、捨て看板の物件の値段を聞いた地場の不動産屋がしつこいしつこい。捨て地だけを売ってくれ、建築条件ナシの、出たばかりの優良売り土地だけ教えろと言って困らせるのがいちばん。そういう土地は前者なら不動産屋が売っても利益がないし、後者は絶対不動産屋にわたらない。それでもそういう要求は無視して、ゴミのようなクソ新築戸建ての付いた激狭土地しか言ってこないから、「金もないしローンも大嫌いなのでやっぱ家なんてやめた」と言って切る。
 NHKスペシャルでイトーヨーカドーをフューチャーした回。ある店の店長が、何度も何度も鏡に向かってひとり笑いながら「いらっしゃいませ」を連発していた。総合スーパーは間違いなく立ち直れないだろうとの確信を深めるさせられた放送だった。
 弱々しく、なれない若者が持ってきた来たのは、国勢調査票。そういえばこの国では、営業とは生涯無縁の人々が、ずいぶんといい給料をもらっている。公務員だ。民間給与が景気回復を反映せずここ7年間下がりっぱなし、というご時世なのに。小泉が経済諮問会議で政府規模を半分にするといって、公務員もどんどん減らすとブチ上げているが、霞ヶ関はもっぱら「非現実的だ」との反応だというニュースを寒々しい思いで見つめた。
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変態を「営業」する市川哲也
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