お盆の秘密──変態ダンナの巻

 奥さんに郷里があって、ダンナは帰省先が特にない場合、仕事の都合なんかでダンナだけ先に家に帰らなければならず、家にダンナひとりとなるお盆がよくある。
 ダンナがフェティシストの場合、そういうお盆は特別な意味をおびる。
 何しろ日頃家族がいる3LDKのマンション暮らし。とてもじゃないが自室にこもってオナニーなんて無理。しょうがないからシャワーを浴びるときに、とか、もっと悲しくなるとトイレで小用のついでにとか、マスターベーションの感興はわびしくなるばかり。もはや「処理」のようなところまで堕ちに堕ちたダンナであった。
 しかし、お盆。年に正月とあわせて2回しかない、たったひとりの自由な、プライベートな空間と時間。半年間たまってきた妄想の数々を、ついに実行するときが来たのである!
 妻と妻の実家には申し訳ないと思いながら、ダンナは隠し持っていた禁断の段ボール箱を開けた。なかには見ただけで胸にうずきが走る、エロイ光沢を放つアイテムの数々が。
 家中のドア、窓をすべてもう一度確認し、留守番電話にして携帯の電源も落とし、いざダンナは自らの妄想の大海原へとダイブするのであった。
 ふと妻と子が郷里で花火などに興じている姿が目に浮かぶ。お盆だからきっと先祖の霊だって来ているに違いない。なのに自分はこんな格好で激しく身もだえしているなんて嗚呼許せ!終わりなき日常を生き抜くために僕にはこれが、必要なんだぁああ──。
 話は変わるが30代を過ぎて、筆者の耳に聞こえてくるのは、男女の性欲の逆転現象の数々だ。ある30代の公務員(女性)は、公費で欧米へ留学した際、既婚にも関わらず、これまた既婚の男性と知り合って激しく互いを求めあった経験を熱っぽく友人に語った。
 男性の性欲のピークは二十歳くらい、女性のそれは30歳くらいと、それぞれにずれがあるらしい。筆者はちょうど女性の性欲のピークである30歳を迎えた団塊ジュニア世代のため、同世代の女性たちがますます元気になる一方、人生の先行きがあらかた見通せてしまいげんなりとしている男性たちの非元気ぶりが際だって見える。この世代の女性たちは、ネットを武器に非常に緻密に細かくコミュニケーションを蓄積して、ネットワークを張り巡らし、あらゆる契機を探っているように見える。
 この世代の女性の性欲にこたえるよりも、フェティッシュなひとりプレイに没頭する方が愉しい、そんな人も多いかも知れない。そう思って今日のお盆の秘密を書き記した次第である。筆者個人がどうのこうのという話ではないことを念のため付記しておこう。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com