キャノンの工場ではたらく

先日のNHKスペシャルでデジカメを作っているキャノンの大分工場の様子が詳しく紹介されていた。そこですごいと思ったのは次の2点である。
1.40代くらいの現場の「リーダー」の人たちが、朝から、「今日こそは、やるぞー」と拳を中空に突き上げて絶叫。
2.工場内を歩行する従業員の歩行スピードまで計測し、遅いと警報音が鳴る。
3.セル生産方式という、簡易なキャスター付きの作業ユニットを組み合わせて、効率的にデジカメを作るが、コンマ何秒まで動作が規定されている。
 筆者は、じつはメーカーに勤めていたことがあるので、工場でもの作りの現場に携わった経験がある。工場ではいろんな人が来るから、一見非人間的・人権侵害のような外見を表示するこの人間の状況も、膨大な経験と工夫の結果なのである。そしてそれらはもちろん会社の業績を支えるのに欠かせない。
 そんなところで働きたいと思うかどうかは人それぞれであっていいと思うが、その工場が膨大な雇用と、付加価値を作り出していることは疑いようがない。
 想定していた目標台数に満たないからと、改善チームが組織され、すぐさまセルの配列が入れ替えられる。そうした、工場労働者が、より効率を上げようと自分たちで知恵を絞って工夫する様子がなにより筆者の胸を打った。立錐の余地無く並べられたセルのなかで、人々が一様の制服を着、一心不乱に作業するその姿。いったい彼らのモティベーションというのはなんなのだろう。
 番組では中谷巌が登場。90年代は人件費の安い中国などへの工場移転が相次ぎ国内産業が空洞化した。しかしやはり日本を根底から支えるのは高い技術に裏打ちされた器用な日本人の手による国内で生産された付加価値にほかならないという主張であった。
 工場でデジカメを作る人たちのやりがいというのも、この辺の、日本経済を支えているんだという矜持から来ているのではないだろうか。
 ところでキャノンのデジカメについて筆者は以前買おうと思ったG5?作為を感じるほどに遅い合焦速度がイヤで購入を見送ったことがある。今はキスデジとか、ニコンからも安く一眼レフのが出ている。あーデジカメ欲しー。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com