夢の探求者貞方邦介研究

 マスコミにだいぶ取り上げられるようになったのでご存じの方も多かろう、青年実業家のこの人、貞方邦介さん。放送作家がコピーを考えあぐねて苦し紛れにつけたのではない、実体を伴う「カリスマ」経営者だ。
 昨日言った夢の好循環の具現者としてもこの人は注目に値すると思う。読んでない人のために復習すると夢の好循環とは、夢があれば、それをかなえるための当面の目標ができる。目標ができれば、目標を実現するための計画ができる。計画が立てられると、あとは行動が起こる。行動が起これば、成果が出てくる。成果が出てくれば、自信がつく。自信がつくともっと大きな夢を、いだける───というもの。
 もともと貞方さんは8歳の時にスポーツカーにビーンと感銘を受け、ぜひこういうクルマを手に入れて乗りたいと思ったが、サラリーマンじゃとてもダメ、会社を作らないとダメだと何となく気がついた。三浪して國學院大學に入り、イベント会社やたこ焼き店経営などで才覚を発揮し、いまでは年商18億円の株式会社アルカサバ社長としてレストランやホテル事業を手がける。もちろん8歳当時の夢はとっくに実現したようだ
 年商20億未満の売上をあげている中小企業オーナー社長ならば、いくらでもそこら辺にいるだろう。しかし貞方さんはただの中小企業のオッサン社長とはまるで違って、ある種のスタイルがある。もちろんスタイルといっても、ライフスタイル系雑誌(ブルータスやPenといった)のうたうスタイルではなく、だが。
「プライベートをすべて犠牲にして仕事に打ち込んできたから、強くなり過ぎちゃったんだ」と独身である理由を説明。週末には自分が30歳で手に入れた2億の豪邸@目黒のそばのマンションに住んでいる両親(福岡久留米の普通のサラリーマンだった)へ花束を持って出かけ、母親の手料理を親子仲むつまじく食べる。マンションはもちろん親に買い与えたもの。親は大喜びである。同行した取材カメラに、親を大事にできないヤツはそもそもダメだみたいな床屋哲学を説教するのがお約束。
 彼は会社を大きくするのには興味がないという。まず自分が楽しいことをする、そしてお客様を喜ばせたい。そうすれば自然と従業員にとってもいいことになる、などという。
 彼の会社は完全にサービス業。スパやレストラン、ホテルなどの従業員には、こんなカリスマ経営者がピッタリだと納得した。ベルサーチやヘリコプター、ハデなベンツのリムジン。そしてうっすらとした微笑とともに語られる、びっくりするほど陳腐な説教の数々。
 彼は見た目はちょっとあの、引くものがあるけれども、夢の具現者として一定の層にアピールすることは間違いない。彼の夢のような人生が、従業員の心をつかんで離さないのである。都心のスパで朝五時まで客をマッサージしたり、腰を90度折り曲げて客を見送ったりする彼の従業員の多くは、貞方氏に心酔しきっているようにみえる。
 申し訳ないが私は彼の従業員になるのは辞退したいと思っている。
 貞方氏から学ぶとしたら、サービス産業の経営者になるためには、あの手のキャラが有効だという、人心掌握の処方箋である。どうも彼のその「術」は、ロックミュージシャンの矢沢永吉氏から学んだようだ。矢沢のライブビデオが彼の心の支えとなっているらしい。
 残念なことに私は矢沢なんて知らないし、興味もないオタク。もちろんスポーツカーなんてほしいと思ったこともない。どうしよう、夢がないじゃん。あーあ、明日近所のマツダのお店へ行ってRX-8(200万円台から買える国産スポーツカー)でも眺めてくるか。イヤ寒いからやめた。
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市川哲也
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