男なんだけど、女

 性同一性障害という病気を背景に、法律によって戸籍や住民票など公で身分を証するものにおける性別表示を、一定条件の下で変更できるようになった。超党派の国会議員が法案を提出し、可決成立したものである。
 今日もまた、ウィッグをつけてラバーマスクを被って鏡を覗き込んでみると、目元、唇、どう見ても女のそれにしか見えない。ラバーマスクは目と口の部分しか外部に露出していない。目元やマスクからのぞくウィッグの、ブラウンのストレートヘアがエロい。どう見ても、外観は、変態女がラバーを被ってうっとりしているようにしか見えない。
 本来の「筆者」=男は雲散霧消し、女が、鏡の向こうから物欲しそうにこっちを見ている。
 そういう状態でかなり安堵し、また日常を送っていても、このような格好を心のどこかでいつも求め、ついには夜中誰もいない部屋でひとり、化ける、この筆者は、もしかして、性同一性障害なんじゃないかという疑念がわいてきた。
 疑念、最近、chikaさんの発見が非常に筆者のアイデンティティーに揺さぶりをかけ続けているのもこの疑念を裏付ける証拠の一つだ。ふつう、chikaさんをみて、あー、珍しいなで終わる。筆者は違う。ああなりたいし、うらやましい。気になる。
 もちろん性転換手術をしたりというのは、ペニスも好きな私としては抵抗があるというか絶対に困る。いやだ。ブーツフェチ=ペニスフェチとか言う分析もある位なのである。
 しかし少なくとも胸を持ち、女性のようにふくよかになり、ひげも生えず、受動的によがる状態にはなってみたい。もっと、変態女として生きる時間を持ちたいと思う。
 残念ながら婚姻関係を持ち、法的責任を少なからず負う身分である筆者は、それはかなわない。しかしだからといって、この不本意な男として現実に忙殺されるうちに、歳をとってしまうのはやるせない。おそらく本当にその病気である人から言わせれば筆者は境界例と見なされるだろう。だが分からない。もし独身で、暇をもてあましていたら、家庭裁判所に足を向けていたかもしれない。
 ラバービザールプレイで確認される疑念、筆者は自分の性別に充足していないという消えることのない認識。この認識を持ちながら、これから親として、夫として生きていかなければ行けない(法律は、婚姻している人を適用除外としている)。
 ここで展開としては、家族への説明責任というものだろう。実際には筆者はここまでは思ってはいないんだけど、こんなケースも考えられる。「お父さんは、体は男だけど心は女なんだよ、体も心に合わせて女にしたいって思っているんだ、でも君ら家族がいるせいで、法的にはずっと男でしかいられない。こんなお父さんだけど、どう」
 ありえない。だから法は婚姻者を除外したんだろう。さてところで、日本人て、実体と言葉の乖離が著しい国民性を有する。実体はどうあれ、言葉ではなんとでも言いつくろえばよいのである。あーよかった、日本人で。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com

男なんだけど、女” への2件のフィードバック

  1.  何度もchikaの事に触れて頂いているのにレスをしないのもどうかと思い、コメントを入れさせてもらいました。決して無視をしているワケではありません。
     日頃から「フェチストであると同時にクレバーな感覚で社会を見つめ続ける」市川様のスタンスに共感を覚えながら文章を拝読させて頂いています。
     本日、chikaのラバーに対する想いの一端をblogに書き込みました。市川様へのエールとしてご一読下さい。

  2. よみました! うれしかったです。
    毎日Shrimp head見てますよ。これからもぜひ書き続けてください!

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