電気自動車が作る革新に満ちた社会

 ETV特集でやっていた電気自動車Elica。燃費は100円で300キロ走る。しかも最高時速は370キロ、加速はポルシェより速く、片山右京が心底仰天した夢のようなクルマができた。ガソリン(というか石油エネルギー)の効率も非常によい(発電からモーターまでを、精製から輸送、エンジン燃焼までと比較したときに効率が3倍以上よい)。
 慶應義塾大学自動車研究室清水教授が先頭になって、地場の中小企業35社の技術の粋を集めて完成したピュアEV(ガソリンを使わない純粋な電気自動車)だ。
 2007年のクリスマスに、200台販売用に生産し、一台3000万円で売る計画だ。燃費が恐ろしくいいことを考えると、また一生使える車であるならば、この価格、決して高いとはいえない。
 プロジェクトの教授ふたりは、この車を生産して販売してくれる企業を探すのに苦労している。既存の自動車産業の企業は、大手自動車メーカーに気兼ねして協力し辛い。まったく新しいものづくりである。これまでの生産設備や雇用の償却が終わるまでは、おいそれと企業側も乗り出せないのである。トヨタの例を出すまでもないのだが、ハイブリッドをエイヤッとやめて電気自動車ダーとなったときに、それまでに投資してきたハイブリッド開発費用はどうなるノゥ!?というはなし。
 じつは中国の電池メーカーが、電気自動車を作り始めている。深刻な大気汚染に悩む中国では、環境負荷の低い電気自動車への需要は切実だ。それに既存の自動車産業がそれほど大規模な投資をしてきていないという点も、新規参入の障壁を低めることに寄与している。清水教授らもそのメーカーへ商談にいったようだが、品質面ではやはり日本が優れているということでその電池の採用には至らなかった。日本のものづくりはまだまだ捨てたものではないようだ。
 電気自動車がもし、一気に普及した場合、エンジンで走る自動車産業は完全に崩壊する。なぜなら、電気自動車は、構造が非常にシンプルで、エンジンの自動車で必要とされるさまざまな部品の大半が不要になるからだ。自動車部品の開発でこの産業は成り立っているだけに、その核がなくなったらもうおわりだろう。
 もちろんガソリン、石油産業、このへんもやばいことになる(これはザマア見ろ、いままさしくバブルで高騰した原油で大儲けしている連中だ)。
 そして、メデタク、ロハスな社会が実現するのである。ただしひとつだけ心配なのは電磁波。Elicaは8個のタイヤの内側にひとつひとつモーターがついている。ものすごい電磁波を発生させているのではないだろうか? 中に載っている人の健康は大丈夫なんだろうか? もちろん、電磁波の人に対する害が科学的に因果関係が証明されているワケではない。しかし、「予防」という観点から、疑わしいのならやめるというのもまた智恵である。
 これほどすごいクルマを前にして、「電磁波は?」などとはなかなか言い出しづらいものがあるのだが、ちょっと心配ではある。
 とはいえ電気自動車の燃費の良さは圧倒的な魅力だ。電磁波を何とか逃す技術などすぐにできるはず……筆者は楽観している。リッター10キロもはしらない、バカでかいクルマ、そう、特にいま流行のミニバンに乗っているお父さん、このElicaプロジェクト、看過できませんぞ。
 それに、みんなが買えば安くなるクルマなんだから、まずは率先して自治体が買うべきだ。特に大阪市。スーツじゃなくてエリーカを買えっちゅうんだ、オイ、このやろう!
 政府主導で、公共事業の一環として、エリーカをすべての自治体の補助機関(省庁、役所)に備えるのである。エリーカ国債法を作って、国債をバンバン発行してエリーカを買う。エリーカは日本のものづくりを支え、さらに元気にするのにはまたとない特効薬になるだろう。
 これまで筆者は、電気自動車というと、非現実的な、理系のマニアックなシロモノだと思っていた。ところが、燃費の良さとポルシェを凌ぐ走行性能、広い室内空間を目の当たりにし、これはたいへんなものが出てきたとマジでビックリした。
 そしてもう一つ、Alt-fetish.comで進んでいる「国産ラバーキャットスーツ開発プロジェクト」。自分の国で自分たちが欲するものを、自分たちで作る。これですヨ、みなさん。やっぱりこれから、これしかないです。エリーカを見てやる気がますます高まった次第です。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com
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