出版業界はこうして生き延びる

 毎日書かさずチェックしている大好きなChikaさんのブログShrimp headが、乗っているブログを運営しているMy profileのシステム作業かなんかでまったく見られない状態になって先日あわてた。ココログにShrimp head Mというミラーサイトがある(ある、というかchikaさんがミラーサイトとしてやっている)のでそちらを見つけてホッとした。読みたいものを読むには、パソを起ちあげて、ブラウザをたちあげ、サイトにアクセスしてはじめて読める(がサーバーがダウンしたら読めない)という、デジタルメディアの脆さを思った。今日のテーマ、紙媒体なら、机の上、書店、物理的にどこかしらに行けば必ずあるというのは、デジタルにはない安心感である。
 さて私は出版業界が好きで、書店、雑誌、本、アマゾン、すべて大好きだ。少なくとも洗剤やクルマよりは。婦人服よりは。オーデコロンや育毛剤よりは。これらより、本が好きである(出版社で仕事したこともあるけど、仕事よりやっぱり本が好き)。もちろん、ほかの趣味である釣りやら旅行、また同じ本でも実用書や趣味の合わない小説、わけのワカラン不幸陳列本(障害者、病死する子供、一般人の不幸、痴呆などあえて本にして販売するのがあまりにもえげつなく反吐が出るジャンル)、エロ本などはあまり好きではない。
 ではどんな本が好きかというと……。お見合いの場で、再現してみよう。
「市川さんはどんな本をお読みになられるのですか?」
「村上春樹とか、太宰とか三島とか。いま読んでるのはヴェブレンの有閑階級の理論です。」(声がどんどん小さくなる)
「は?」
「いや、なんでもないです。まあ建築関係の雑誌とか、実用書とかですかね、ははは」
 私の読書についての「ご趣味」はおいておくとして、今日は薔薇族が廃刊になったことを受けて、果たして出版ビジネスはどうなっちまうんだということ、つまり紙媒体の現在過去未来を考えてみたい。
 HOTWIRED JAPANの記事「デジタル時代、出版業界が生き残る方策は?」によると従来の出版・印刷業会が生き残る方法のひとつは「デジタル媒体サービスの提供」だという。
 ところが今日、こうしたサービスを提供しているのは、専門のコンテンツ会社(サイバードやインデックス)とか携帯電話会社である。従来の出版、印刷業界はすでに電子サービスの提供というイス取りゲームにおいて、すっかり後陣を喫した。
 それでも同記事は「大量送付されるダイレクトメールが人の目に触れる可能性は、たとえゴミ箱からはみ出している状態でだとしても、フィルターで簡単に排除されてしまうスパムメールよりも高い」と、あるコンサルタントの意見を紹介している。デジタル媒体サービスよりも、やはり従来通り、紙になにかを印刷して、すでに整った流通機構を通じて流していたほうがいいんじゃないかと示唆している。
 紙媒体がデジタル媒体を凌ぐ優位性は、まだまだあると見ている。たとえばドライアイ。CRTとか液晶といったモニタ、外部表示装置というのは実に目が疲れる。筆者のような神経症タイプなら、集中力がすぐ途切れて瞬きパチパチ。おかげでドライアイとは無縁だけれど、妻は一切瞬きをしないため、30分とたたず目が疲れる。また、日本でもソニーとか東芝(だったけな)が開発した、デジタルコンテンツを読むいわゆる「電子ブックリーダー」をビックカメラで見たけど、悪い冗談にしか思えない代物だった。重くて、価格も超高く、これで本を読んでいたら単なる笑い者かバカにしか見られないだろう。
 それに、最近、アメリカで興味深いニュースがあった。ネットで無料で見られる政府刊行物『9.11委員会報告書』を、ペーパーバックにして販売したらベストセラーになったというのだ。HOTWIRED JAPANの記事では「9.11委員会のウェブサイトにアクセスして報告書をダウンロードする作業よりも、10ドル程度を支払って書籍版を購入することを選んだ人は、60万人以上を数える。」と述べている
 じつは閑職に追い立てられた頃に筆者が楽しみだったのは、ネットでこれはと思うテキストを、お気に入りのエディタに貼り付けて、社内のハイエンドプリンターが備える驚愕の機能「両面小冊子」で印刷して昼休みや会社帰りに読むことだった。
 しかしいまや毎日忙しくてこんなことをしている暇はない。それに、『9.11委員会報告書』のケースと同様、いちいちプリントアウトするのは結構面倒だし、コピー用紙にレーザープリンターで打ち出された「MS明朝」の文字も決して美しいとはいえない。
 また、電子ブックも今ひとつである。PalmのPDAでロビンソン・クルーソーを読んだことがあるが、味わい深い「読書体験」とはほど遠かった。なんだかほぞをかむような……。
 そう、ものを読むなら人間、やっぱり本なのだ。これはあらゆるPDA端末、電子ブック、そしてPCからプリンター出力など、本以外の電子媒体や紙の印刷物を試してきた私の体験的結論である。
 今日のタイトル「出版業界はこうして生き延びる」の答え、それは私のような本好きがいる限りは、大丈夫ということだ。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com

「出版業界はこうして生き延びる」への1件のフィードバック

  1. 少し前のアエラで、ある企業の人が、
    「今、2000円の扇風機を買う消費者が
    5000円のうちわを買う時代」
    と言っていた。
    その感覚には少し納得。
    私もあいかわらず本や雑誌、買い続けています。
    立ち読みだけでいい場合もあるんだけど、
    やっぱり買ってしまうということは、
    なにかこう、そうさせる魅力がそれにはあるということで。
    読み物以外の場合はたいてい表紙が好き、とか
    なんか本棚に並べたい、とか、その程度の理由だったりもするんだけど。

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