幼女を次々に誘拐して殺害した実践するロリコン犯罪者、宮崎勤の事件が起こって以来中森明夫氏に命名されたオタク。
オタクとはどんな「層」を指すのか。いうまでもないが、筆者もまた、自分の中にあるオタク的な側面の居心地のよさにある種の後ろめたさを感じる、そんな一人のオタクである。そして社会学的な関心から(というより宮台の影響で)ずっと世間のオタクについて注意を払い続けてきた。
今日、じつにユニークというか、そこまで踏み込んでいいのだろうかというオタクの「定義」が日経流通新聞MJ紙上に出ていた。
記事は野村総研のコンサルタント、北林謙氏が執筆した消費分析「ヒット生むオタク層」。まずオタク層、というタイトルからも分かるように、世代をまたがる、ある特性を備えた一群の消費者の類型のことである。さっそく氏の分析に基づく定義をみていきたい。北林氏は、オタクを、その興味関心から、「アニメ」「アイドル」「コミック」「ゲーム」「組み立てPCオタク」の5分野に分けている。
アニメオタクは「アニメの視聴を日課とするアニメ好きな層。テレビアニメを週十本以上録画する人が多く、パソコンやHDDレコーダーを積極的に活用するなど、ITリテラシー(活用能力)は相対的に高い」
ITリテラシーが高く、パソコンや先進のAV機器を取り扱える層というと、当然成人、それも男性であることが自然に推測できる。成人男性が毎日アニメを視聴しているわけだ。
アイドルオタクは「特定のアーティストやタレントに対して強いあこがれや共感を持ち、情報収集や応援活動を生活のなかで高い優先度で積極的に行う層」である。「「現場系」(アイドルの追っかけ)と「コレクター系」(資金面の負担が重いため、二十~三十代に分布)、その2タイプの複合系からなる」
分布ってあなた、いいんですか。なにか珍しいイキモノですか、オタクは? それはいいとして、私にとっていま、いちばん萌えているのはいうまでもなくchikaさん。ただ「情報収集したり応援活動」をするとなると完全に犯罪になるのでネットで拝むだけで我慢している。
コミックオタクは、出た!「同人誌即売会に参加する、あるいは同人誌を執筆する層が中心。コミックでのキャラクターが活動の中心で、その表現活動はさまざま。派生系としてコスプレ」
コミックでのキャラクターが活動の中心という意味が私にはよく分からなかったが、コミックオタクはマンガの世界に生きているというような人たちであることは衆目の一致するところだろう。
コスプレの人たちが、フェチの顧客になりにくいというのは筆者の長年の経験値から何となく感じていることだが、理由は、やはり彼らのメインはキャラクターにあるんであって、その容姿外観は二の次ということだろう。たまたまそれがフェチならフェチだし、着物なら着物でいいのである。
ゲームオタクは「生活時間のほとんどをゲームに費やしているヘビーユーザー層。ビッグタイトルの寡占化で新しいジャンルの創出がなく沈滞気味」 沈滞する理由はPCのエロゲーに流れているというのもある気がする。
組み立てPCオタクは「文書作成や科学計算などコンピューター本来の使用目的を忘れ、組み立てる行為が目的化している層。余暇時間や可処分所得の多くをPC組み立てに投下。ソフトをインストールして性能評価を終えたらすぐ売却し次のパーツを物色」
文書作成や科学計算が本来のパソコンの使い道として果たして正しいのかどうか、これは議論の余地がありそうだ。筆者もUNIXを組み立てパソコンにインストールしたときの嬉しさをよく覚えている。こんなことを言うとぎょっとする向きもあろうが、子供が産まれたときよりも嬉しさという点ではその感情の純度が高かった。
こうした5種類のオタクを総じて、「オタクは消費性向が高いだけでなく、批評やアレンジやパロディー制作などの創作活動を活発に行い、創造性豊か」とまとめている。
5分野あわせたオタク総数は国内に285万人にて、2900億円市場であり、これはデジカメとか、DVDレコーダーの市場規模を超えるという。
これだけの規模になるともはやニッチとはいえない、ひとつの立派な市場となる。奥手のオタクがはじめて女性と恋をする様をリアルタイムに掲示板に書き込み、多くの人の励ましを得るプロセスをそのまま本にした『電車男』が十万部を超えるベストセラーになったが、これもまたオタク市場に結実したユニークな商品の一例だ。
以上のように、日経流通新聞というそれなりのポジションを締める専門誌に今回北林氏が書いたオタク評は、これまでになく踏み込んだ斬新な定義であると思われる。大手新聞で、しかも読み手は流通業に従事するようなオッサンとかが読者。果たしてオッサンが読んで、「アニメの視聴を日課」「生活時間のほとんどをゲームに費やしている」「アイドルの追っかけを高い優先度で積極的に行う」「キャラクターが活動の中心」「組み立て行為が目的」、こんなオタクを理解できるのか、一オタクとしてはなはだギモンではある。
何を隠そう筆者もまた、オタクである。いろいろとオタクのいる分野をつまみ食いしてきた過去がある。その一端を紹介すると、鉄道模型、ラジコン、アニメ、マンガ、フィギュア、組み立てPC、アイドル、カメラ、同人誌制作、これら全部を中学時代から、二十代前半にかけて全部やった。同時並行は資金面から難しかったが、それぞれに楽しく幸せな趣味のひとときであった。
で、いまは私は何オタクかというと、北林氏が今回挙げた分野には含まれないが、去年のTOEIC730点とかAFP資格合格で資格オタク魂が目覚めたようだ。残念ながら先週日曜日に行われた行政書士試験には落ちてしまったものの、悔しさからますます資格には萌えている、変態市川哲也である(しばらく間隔が開いてしまったが行政書士資格試験に落ちたショックで一時無気力になっていた)。誤解無いようにいうが、別に資格取得して開業しようとか転職しようとかじゃない。勉強を口実に、何とか日常の倦怠、うんざりするさまざまなものごとから逃れたいだけである。
え、フェチは違うの?と思う人へ。フェチは違う、オタクというよりもこれは存在そのものに関わるもっと大切で、本源的で、重要な要素だ。PCでいえば、オタクがアプリであるとすると、フェチはOSである。
そういうわけで、生きることそのものに関わる重要な私の要素、フェティシズム、そのフェティシズムゆえにこぼれ出てくる言葉を、小手先の資格取得で落ちたくらいで止めることなく、これからも続けていきたい。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com