話題の引き出しとズリネタの引き出し、これはいずれも「多いほうがいい」に越したことはない。
ズリネタの引き出しが多ければ多いほど、話題の引き出しも非常に限られたシーン(猥談)においてのみとなるのだが、多くなる。 私がもっとも抱腹絶倒となった、高校時代の変態の友人のケースを紹介しよう。彼は見た目はまじめでハンサムであった。ところがある日私にこう言うのである。
そいつ「ねえ、きのうさっ、あれのときねっ、ガンシャっていうヤツ?しちゃったっ、フフ」
私「エー、無理でしょう。どうやって」
そいつ「イク直前によいしょって腰を上げて、首を視点に倒立みたいにして」
それ以来私は、男でも自分のを顔に浴びることができるというケースに強い関心を持った。バスケ部の練習にいそしむ同級生の群のところへいって、ストレッチをさせ、それだと自分でチンポくわえられるね、といって白眼視された。しかし彼は、私(優等生キャラで色白でまあまあハンサム)が「チンポ」とか「オナニー」とかいう言葉を平然と発するのに仰天していた。かわいそうにまじめで責任感の強いその男は、オナニーネタも話題の引き出しも少なかったばかりに、次第にクラスでは孤立を深めていった。
反面、私のようにバリエーション豊富なオナニーを日夜研究し、開発し、実践する男は男女いずれのあいだでも人気となった。もちろん、クラスのリーダー的な人気というのではない。私が高校時代、すでに、そうした規範的なキャラが広く人気を集めるような典型的なクラス集団というのは絶滅していた。むしろ私みたいに変キャラが大いに受けるのである(最後はさすがに飽きられたが)。
OL生活という言葉に「オナニーレンジツ生活」とルビを振ったり、ポケットに手を突っ込んでチンポをコスってするオナニーを「ポケオナ」と命名したのはほかでもない、この私である(ってだれも知らないか)。
そして年月は流れ、高校時代の日常ははるか遠い思い出となったいまとなっても、私の最大の関心事は、オナニーである。
もちろんフェティシストであるから、誰かパートナーをもうけて一緒にプレイしてみたいというのはあるのだが、現実的な諸条件、パラメータの中で、そもそもそれは不可能である。不可能なパラメータを設定しても無理なのである。現実的にはオナニーをひっそりとひとりになれる時間を見つけて深くするというのが精一杯だし、一番合理的だ。私は多くのラバリストのズリネタにもなりたいと思っている。ラバーを着るようになってから気が付いたのは、自分にとって最高のズリネタは、ラバーを着た自分自身であるということだ。ナルシストとかそういうのとは違うと思う。普段の自分に酔うということはないので。変態性ナルシストか? 人様に見てもらって、それで抜ける人がいるのなら、自分に商品性があるということだし、誰も評価しないのならただの手に負えないナルシストということになる。
オナニーのバリエーションは多いほうがいいというのはラバーを絡めたオナニーひとつとっても当てはまる。BLACKSTYLEのキャットスーツなのか、Alt-fetish.comオリジナルキャットスーツなのか。また色は、どうするか。重ね着するなら何を着るのか。こういうことを考え、ひとつひとつ実行していくプロセスは何とも言えない至福の時である。それは単なるオナニーにとどまらない、「茶の湯」の精神に通ずる宇宙との対話にほかならない。
話は変わるが、今月3月末は大企業の決算の締めだ。クルマ、住宅など、高額商品を買うのにはもってこいの月なので、読者諸兄で該当するお買い物を控えている方は、チャンスだ。Alt-fetish.com運営会社は9月末だが決算セールは一切しないのであしからず。1ユーロ140円にチラチラ手が届いている最近は、スタッフ全員が鬱病となっている。
Text by Tetsuya Ichikawa
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