マンカインド・プロジェクト。男らしさの呪縛から自由になろう

マチズモという言葉ご存じでしょうか? 男らしさ、「強さ」「たくましさ」。男性優位の価値観から出てくる、いろいろな思想信条、思い込み、偏見、そういうものの底辺に昔からある傾向です。男性優位の競争社会では、男性は黙ってたえる。戦いには勇敢に参加して、そしてそれを女性は献身的に支えるのが当たり前。家父長制。こういうのがネトウヨ、保守層を都合よく束ねて世論を操作し、自分たちに都合のよい方向に持って行きたい連中が利用します。
英語で言うとこういう表現になります。patriarchal and hierarchical ideas of masculinity。つまり家父長制と、男らしさの階層的な価値観。
しかし、実際のところ、男たちはもうそういうのに疲れ果てて、うんざりしているようです。だってそうでしょう。いくら国家のため。自分の属している企業のためになにかやったところで、結局、全世界の富の半分は、たった8人の大富豪の懐に吸い取られるだけです。いくら頑張ったところで、自分は貧しくなるばかりのこのゲームなんだから、「何とかの誇り」とか言ったところで、回復できる誇りなどもう構造的に存在しないんですよ。だから、アメリカの「ケツ舐め国家」(宮台真司)と化したこの日本で、歴史修正主義作家の書いた本を読んだ、みたいなツイートが流れてくると、(以下略)。修正すべきなのは、じつは歴史ではなくて、もっと身近な問題だと言うことが今日の話題です。

さて、ニューヨークタイムズの記事によると、自己啓発系の団体による男同士で本音をさらけ出し、お互い傾聴するという活動が盛んに行われているようです。
自己啓発系セミナーというとすぐ、カルトとか、拝金的ネズミ講を連想させますが、単に男たちが集まって本音を言い合う、互いに聴き合うだけなので、そういうやばいものとは違うようです。

たとえば、「マンカインド・プロジェクト」という33年前に誕生した非営利団体の取り組み。男たちに心の平穏をもたらすことを専門に取り組んでいます。その方法となるのは、ユングの精神分析理論や共感的コミュニケーション(NVC)、ブレスワーク(呼吸法)、アメリカ先住民の風習などなど。会の目標は、男らしさについての家父長的で特権的な観念を打ち破ること。起点となるのは、古代ギリシャの「汝自身を知れ」という箴言だそうです。マンカインド・プロジェクトでは、この言葉を、自らの感情に対する気づきを育み、そうした感情を害のある形で他人にぶつけないようにするプロセスだ、と解釈しています。それは、感情を表に出す一連の簡単な練習(中には小道具を使うものもある)を通して成し遂げられます(cf.ニューヨークタイムズ2018.12.8https://www.nytimes.com/2018/12/08/style/men-emotions-mankind-project.html)。

重要なフレーズがありましたね。自分に対する感情を、「害のある形で他人にぶつけないようにする」。原文を見てみると、こうあります。主催団体Man kind project、MKPが主語です。MKP translates this as a process of cultivating awareness around one’s emotions, so they aren’t projected onto others in harmful and destructive ways.

いま、排外主義やヘイトスピーチ、そして悲しいネットへの匿名書き込みの多くが、まさに「害のある形で他人に乱暴にぶつけられたエゴ」になってしまっています。そして、実際のところエゴに過ぎない、しかも孤独とか、むなしさ、自分の人生への退屈や諦観なのに、国家とか、「誇り」とか、無関係な大義を持ち出してきます。だから一見言っていることは正しく、伝播力も強いので、非常にやっかいです。
ですから、マンカインドプロジェクトの活動のように、天下国家を論じたり、歴史を修正したくなったり、歴史修正主義の本を読んで「ウォーッ」(モーリー・ロバートソン)と「沸騰」(宮台真司)したり、ネットに書き込みたくなったら、まずは「汝自身を知る」ことがいいでしょう。日本だけの歴史とかじゃなくて、自分の感情を深堀してみる。そういうプロセスに入っていく方が、大義名分の威を借りた、実際のところ小さくて寂しいエゴを、「他人に有害で破壊的な投射」をしないで済むことになるわけです。

ALT-FETISH.comはボンデージを通じて、少なくとも私はお客さんとの体験から、ボンデージの体験が自分自身の感情と向き合い、健全な方法でさらけ出すことができるじつは有効な機会たり得ることを知っています。
いやだって、相手が女でもない、若くもない、たんなるオッサンであったとしても、ボンデージ、ラバーがあれば、ビーンとチンコが起つわけです。この起つチンコが、チンコこそが、一番正しいし、自分の感情そのものを混じりけなく表していることを、あなたは否定できないでしょう。いま、時代に求められているのは、社会を良くするのは、立ち上がれ日本ではなくて、立ち上がれチンポです。
ですので、マンカインドプロジェクト、ひいては、ギリシャの箴言を、現代日本にボンデージの力を借りて実践しようと思っています。そうすることで、人々は誤った、間違った、正しくない(マルクス・ガブリエル、ドイツの哲学者)言論で短期的なカタルシスを得る、不毛な悪循環から救い出せると私は確信しています。そのための設備がまもなく出来上がり、みなさまの前に登場します。乞うご期待。