ラバーシスターズとL-A-TEX.com

 ラバーキャットスーツ、ラバーフェチから効果的に愉楽を引き出すためには、コスチュームやシチュエーションを使っていかに、通常の普段の、自分から遠ざかるかが鍵となります。社会的規範にガチガチに拘束されて身も心も不自由さから来るフラストレーションに倦みきっている私たちの心身はいつも、ラバーによる大変身、大変化、転換を求めているのです。
 今日から発売のヘヴィー・ラバー・マガジンNo.28ではラテックスコスチュームを使った大転換のテクニックの実践者である、ラバーシスターズの活動と、アマチュアモデルを使って、ラバーコスチュームと照明の工夫によりフェティシズムへの情熱を引き出すことに成功し続けている天才的写真家、L-A-TEX.comのアレキサンダー・ホーンのインタビューが掲載されています。
 まず前者ですが男性が変身を遂げる場合は、男性には生来備わりようもない女性のふくよかな体型を備えるために、空気を入れてふくらませて形を作る特殊なラバースーツが出てきます。このスーツを着ることで、ゴツゴツした岩盤のような男性の身体は胸やヒップにふくよかな隆起を獲得し、美しくなだらかな起伏に富んだボディラインを形作りはじめます。股間には大きく強調された外陰部大陰唇をモチーフとする造形物が装着されます。そして、精巧に作られメイクも施されたフィーメールマスクをかぶり、ウィッグを付ければ、そこにいるのはポルノスターそのものです。中にいる人間に許された外界との接点は、両目と鼻に開けられたわずか数ミリの穴のみです。変身を遂げたフェティシストはこの号のグラビアに描写されているようなさまざまなカテゴリー、シチュエーションでのプレイを堪能します。これらのファンタジーはいずれも本場のラバーフェティシストならではの筋金入りの妄想からわき出るアイディアの結晶です。
 そして、90年代から私が非常に注目してきた有名なフェティッシュフォトのサイト、L-A-TEX.comのインタビューは見逃せません。クリス・アンダーソンがフリー云々と言い出すそのはるか前から、彼はこの自らのサイトで、多額の私財を投じて撮る写真たちを惜しげもなく無料で公開しているのです。彼の記事とインタビューを以下に訳出して掲載しますが、これを読むとフェティッシュな情熱に満ちあふれたこの写真家の哲学には、「営利」というけちくさい資本主義の欲望など微塵も感じられません。私たちがこの世に生まれてきてやりたいのは、フェティッシュな対象を目にしたい、手に触れたい、写真に撮って表現したい、そういうことです。それが目的であり、撮った瞬間には目的が達成されます。そして次の欲望はもちろん、もっといい作品を作りたい、そういうことです。決して、もっとあくせく数を増やして金儲けしたいとか、そういうことではないのです。前回のメルマガでも紹介したマーキスジャパンを主催する人物もまた、そういう情熱の持ち主です。
HEAVY RUBBER FETISH MAGAZINE No.28 84ページ特集「アレクサンダー・ホーン L-A-TEX.comの歴史と現在」 記事抄訳
アレクサンダー・ホーンはむしろ古典的なカメラマンといえる。なぜなら彼の写真はほとんどわずかにしかデジタル加工やレタッチ処理されていないからだ。彼はそうした古典的なカメラマンはもはや絶滅危惧種の職業だと知っている。というのも今日、誰でもフォトショップさえ使えれば、つまらない写真も傑作に加工することができるからだ。「私は依然としてアナログ写真を撮っている。そしてこれは続けようと決意した」彼はそういって笑う。「理由は単に僕が怠惰だから。写真を撮るときに、完璧なものをその場で撮れば、あとでデータをいじる手間が省けるだろう」
 ホーンは1990年代の初めにフェティッシュな作品を撮り始めた。彼は、何を自分が求めているかがよく分かっていなかった。ラテックスをまとった美しい若い女性の姿を。数年がかりで彼は自分のスタイルを確立した。素人モデルを使うから、彼はプロ以上にライティングに拘る必要があった。この熱狂的なフェティッシュへの情熱のすべて、本当のフェティッシュ感覚、そして本物のルックスは、デジタル加工処理をうわべに施しても決して得られるようなものじゃない。
 ホーンは1995年にウェブサイトL-A-TEX.comをはじめた。作品をより大勢の人に見てもらうために。何年も続けるうちに新しいアイディアを見つけるのがだんだん難しくなってきた。結局繰り返し作品を撮るしかない。「実際、僕は同じものを何度も撮ってきた。でもその理由はたった一つ、そうすることによってしか、上達する術はないと分かってるから。まあそうはいってもコスチュームを変えたりして新しい作品を撮る試みにはトライし続けているけど。」
 たいていのホーンのモデルは、若いし、当然コスチュームだって持っていない。だから北ドイツ出身のこの写真家は自分で専用ワードロープを構築するしかなかった。「いやー高く付いたよ、撮りたいもの、気に入ったものは全部自腹で買ってきたんだ。幸い、最近ではいくつかのラバーコスチュームのメーカーがかなりのリベートをくれるようになってきたけどね」
 ホーンの写真は彼の好みを反映している。そして美を表現している。フェティッシュに内在された。ビザールなタッチの写真からでさえ、美はそこにある。もちろん、汚らしさやポルノチックな表現抜きで。ラテックス、マスク、そしてボンデージはアレクサンダー・ホーンのメジャーな要素だ。それらは私たちにヘヴィー・ラバーの風をまっすぐに届けてくれる。
インタビュー
MARQUIS(以下M):いつウェブサイトを始めましたか?
Horn(以下H):1993年に最初のフェティッシュ写真を撮りました。サイトを始めたのは1995年です。
M:どのくらいの業務がこれらのアップデートの裏側で行われているんですか? デザインや、特に全部無料で公開しようとしてからの。
H:めちゃめちゃたくさんです。全部やってるんです、自分で。プログラミングから何から何まで。しかもオープンソースのコンポー年つとかASPなども使わずに。
M:モデルでは、素人も、プロも使ってますね。素人モデルとプロの違いってどんな感じですか?
H:私はプロのフェティッシュモデルの多くと仕事をしてきました。たとえば、ジーン・バードット、ダンテ・ポッシュ、スウェイ、ダイアナ・ナイト、ラバードール、レベッカなどです。
プロと素人、それぞれメリットデメリットがあります。経験豊富なプロフェッショナルモデルの場合、最初は仕事しやすいでしょう。緊張感や不安感が少ないから。でも自然な表現をプロから引き出すのは難しい。なにしろあまりにもポーズや表情がルーティン化してしまってるから。ありがちっていうやつですか。
アマチュアモデルは恥ずかしがったり不安を感じていたりして最初はたいへんです。でも彼女たちはそれを克服するとむしろプロよりも説得力のある画が撮れます。それは別としてもアマチュアは私のウェブサイトでしか公開されていない、つまり単独、限定公開という点も有利ですね。
M:モデルに求めることってなんですか?
H:容姿とかプロポーションといった明白な基準の次に重視するのはラテックスへのウソ偽りのない情熱です。もしモデルがラテックスに心地よさを覚えることができないなら、いい写真にはなりません。あと女王様の場合は、撮影中は女王様でいていただく必要はありません。撮影中はカメラマンのいっていることをよく聞いてカメラマンにしたがっていただきたいです。
M:好きならバーアイテムは?
H:私の好みはラテックスマスク、ギャグ、そしてキャットスーツです。インフレイタブル(空気でふくらませることができる)服も好きです。
M:あなたの好きなままに撮りたいですか? それともモデルのテイストも重視してモデルに妥協しますか?
H:何を着るかは、モデルと私で話し合って合意したものを選びます。彼女がそもそもその服を心地よいと思わないのなら、よいパフォーマンスは期待できませんし。また彼女にとってもその撮影は意味をなさないでしょう。
M:今まで15年撮ってきて、数え切れないほどのシチュエーションを見てきたと思います。まだ実現されていないもので、あなたの温めている撮影アイディアはありますか?
H:そうですね、興味深い環境、パーティーイベントでのフォトセッション、通常とは異なるライティングに関心があります。新しい服にも挑戦したい。町中や、近未来を想像させるロケーションで撮影するのも好きです。
M:他のプロジェクトについても教えて下さい。
H:そうですね、L.A.Texからスピンオフさせた、フェティッシュパーティーやニュースについてのインフォメーションのサイトを立ち上げています。このサイトでは私のもう一つの重要な活動、フェティッシュパーティーのスナップ写真も掲載しています。私は世界中を旅して、世界各国のフェティッシュイベントでスナップを撮っているんです。Kink in the Caribbeanではオフィシャルフォトグラファーです。アメリカ、カナダ、英国、オランダ、もちろんここドイツでもほとんどのフェティッシュイベントに行っています。
2002年にはDVDも出しました。今は品切ですが。私の写真はセックス 野生の道を行くというサンプルブックにも掲載されたことがあります。本当は自分の写真集が出したいんですが、ふさわしい出版社はまだ見つかりません。(取材・文:たぶんピーター、日本語訳:市川哲也)
ヘヴィー・ラバー・マガジン No.28(英語版)は今回はワケあり品(端折れ曲がり)を500円引きで売っています。ご注文時のオプションで「訳あり-500円引き」オプションをお選び下さい。数に限りがあります。
http://www.alt-fetish.com/mag/2024/2024.htm
MARQUIS No.50も同時発売。
http://www.alt-fetish.com/mag/2023/2023.htm
【フェティッシュジャーナル】[ラバーフェティシストのためのメルマガ・ブログ]
文・市川哲也
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