地下壕探検のフェティシズム

 普通のオナニーでは一向に萌えない私の変態性追究の旅路。その途上ではさまざまなほかのフェティシズムも浮かび上がってくる。薄暗い性癖を照らすひとつのヒントになるのだ。
 地下壕が好きで萌える。誰もいない真っ暗闇。いつ誰に掘られたかもどこへつながるかも、最近誰かがいたのかも一切分からない地下壕。懐中電灯の光がおよばない先に誰かいるのかも知れないしいないかも知れない。恐怖が通奏低音のように頭の中をめぐる。
 筆者の地下壕との出会いは、三鷹のICUの地下壕だ。野川公園(武蔵野公園)からアクセスした記憶がある。いまから二十年くらい前に探検に行ったがその時の地下壕の様子はいまでも容易に頭の中に想起できる。とてもワクワクして興奮したものだ。
 最近では地下壕で遊んでいた中学生が、崩れて生き埋めになって亡くなったり、住宅地が突然陥没し、調べたら原因は地下壕だったなど、悪名高い厄介者となっている存在。天井を補強するなどして、面白いエンタテイメント施設にすりゃあいいのに。せめてどこに地下壕があるか、各自治体は公表するべきだろう。不動産取引での重要事項説明が義務づけられているが、地下壕はその中に必ずしも入っていないし、そのことで損害を被っても国の補償は得られないのが現状のようだ。まったくひどい話である。
 ひどい話ついでに、日本の国民の半分くらいのひとが小泉首相の靖国参拝を止める必要はないだとか、憲法改正するべきだと思っていると朝日の世論調査でみた。つまりそれだけ多くの人が、残念なことに、まともな教育の機会も得ることなく成人して社会にでているということである。空恐ろしい世の中だ。
 話を地下壕に戻そう。地下壕と同じ暗闇つながりで押入も好きである。近年、押入のある家というのは大分少なくなってきたように思われるが、むかしは私の家にも押入があった。結局地下壕も押入も暗闇だから、容易に想像力の翼を羽ばたかせられる。
 その想像力の翼に載って、私は妖しい妄想の海の波間に身を浮かべるのである。
 押入や地下壕によって醸し出される闇、暗さ。怪しさ。そういうのに癒されることがある。東京ディズニーランドに行って必ず入ることにしているアトラクションがある。それは、カリブの海賊だ。入り際の入り江が何ともいえず好きだ。ブルーバイユレストランを過ぎたあたりで左手をみると、アメリカの開拓地だろうか、入り江脇掘っ建て小屋の戸の前で、老人がタバコをくゆらせながらロッキングチェアに座ってこっちをみている。まわりは深く草が生い茂り蛍が舞っている。あの辺の雰囲気が最高にいい。マジでリアルだし。
 あの老人を、私は85年、95年、2005年と節目節目で眺めてきた。私は老人を訪ねるごとに成長し、当初母親だった連れ合いも、恋人、そして娘へと変わる。次は誰を彼に見せることになるのか、ちょっとした人生の楽しみのひとつだ。
 
ディズニーランドも地下壕も押入も好きな変態市川哲也
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