弟が日本の三大新聞社のひとつでアルバイトをはじめた。ワセダの政経に通うヤツならではの、おいしい「人脈バイト」である。筆者もじつはこの手のバイトを経験している。TBSとか集英社で。
そういうところで働いてみた弟がさかんに騒いでいたのが、「社員はかっこいい」。かっこいいというのは、働く姿がなんだか胸を打つとかそういうのじゃなく、外見がモデルみたいにかっこいいということである。背が高かったり、顔が精悍だったり。
筆者も就職活動をしていて思い出したが、新聞、テレビ、代理店の大手ともなると、完全に買い手市場である。いくらでも人は選びたい放題選べる。結局、学歴に容姿と体力が備わった人が選ばれるのである。クルマでいえば、最高級車に、すべてのメーカーオプションを付けたような、そういうキャラだ。オプションどころか、最高級車でもない私のようなのは書類で落とされる仕組みだ。TBSでのアルバイトや、就職活動を通じて、それは真実であるとの確信を深めた。それを言っちゃおしまいだが、そうしたメディア企業の理不尽さに一抹のむなしさをたびたび感じていた、というのが筆者の大マスコミへの所見である。
ホリエモンは、正直言って外観はマスコミには選んでもらえない、色白なオタクキャラ。私もそうでした。しかもホリエモンはいまやだらしなく肥え太り、キモイ。脂ぎった肌、色白なのに服がカジュアルだから単なるだらしのない不健康なヲタにしか見えない。誰か大企業のオッサンがホリエモンのことを「公の場でスーツを着ないのは非常識」と言っていた。非常識かどうかは別にして、少なくともスーツくらい着ればビシッと決まってまだ好感度はあがったろうに。残念だ。昔はあれで長髪だったらしい。きっとモテたくてそうしていたに違いないが、色白で太っているという点でおおかたの美女はそっぽを向くだろう(まああれだけの金持ちになれば話は別となるわけだが)。
そのキモイヲタに株を買われ、経営トップに居座られようとしている、容姿も学歴も兼ね備えたかっこいい大マスコミの一群がいる。フジサンケイグループ、とりわけニッポン放送の気の毒な社員たちだ。裁判所に棄却されようが、差し戻されようが、あくまで戦うそのけなげな姿。司法の場における虚しい負け戦を重ねるほどに深まる哀れさ。あそこまで抵抗するのは、何と言っても「自分たちはこんなにかっこいいし、選ばれたエリートなのに、なんでアンナわけのワカランキモイヲタに支配されなければならないの、絶対いやーキャー、強姦よ、助けてー」という感情があるのだろう(ないか)。
まああまり問題にはされないのだが、筆者は痛切に感じたのが、大マスコミの内定獲得には容姿も重要だということである。筆者もその後社会人生活でいろいろなオフィスを見たが、もっともひどいのは金融機関のオフィスである。よくもまあこんなに○○ばかり集めたなっていうのが金融機関だ。そしてテレビや、電通のようなところは「ウソでしょう?」みたいな、私から見ると宇宙人のような美男美女ばかりであった。ホリエモンとフジの戦いでは醜いホリエモンがそのマスコミに逆襲を果たした、そういうふうに私には読める。
ホリエモンの巻き起こした今回の騒動で、小泉首相は、「頭のいい人たちが……たいへんなことで」みたいに完全に傍観姿勢だった。マスコミにいると、ホリエモンがやっているような、法の目をかいくぐった企業買収、みたいな話は、本当に疎遠となる。日々ネタ探し、安定的なコンテンツ供給、広告枠の消化などそれぞれで忙しく、そんな企業買収、なんて小難しい話は誰も分からないのだ。そこが逆にマスコミの弱さだろう。
ホリエモンは美食には目がないようで、今後もその醜さの度合いを深めることだろうが、少なくとも「キャラ」として、「日枝」よりは全然、いけてるのではないか? 水戸黄門で、印篭を見せられて「ぐぇへへええ」となる悪代官みたいな日枝にくらべ、若くて頭のいいホリエモン、もちろんヲタっぽくはあるけれども、人気者であることは間違いない。
マスコミなんだから、そのへんの見せ方でもっと工夫できたのではないかと思う。たとえば日枝が玄関前でああだこうだというのではなくて、里谷多恵(最近、六本木の飲み屋で泥酔して店側とトラブルを引き起こした、五輪金メダリストでフジテレビ社員)が一升瓶を持って「ホリエモンなんかに負けない、ぞー」と威勢良くクダを巻く、くらいのパフォーマンスはあっていい(昔のひょうきん族はそういうノリのコントが多くて私は大好きだった)。少なくともコンテンツを作るメディア企業なんだから、それくらい楽しませてくれないと、果たしてメディア企業としてどうなんだろうというのはある。
今後のことだが、とにかく私としては、メディア企業、特にテレビ局のおいしすぎる高賃金はズルすぎる(フジの平均賃金は1000万超。四季報に出てる)。だからホリエモンに買いたたかれてリストラし、ライブドアの平均賃金(400万円)並にしてもらいたい。なんでって、そのほうがスカッとするでしょう。そのことのインパクトはかなりでかいけれども、全然、そんなの当たり前のことだと思う。とにかくキー局のテレビ局の社員の給料というのは高すぎると思う。
高すぎるのは給料だけじゃない。利益率も、資産における金融資産の割合もほかの業種にくらべかなり高いそうである。儲かったものを金でため込む(しかもほとんど配当をしないらしい)とどうなるかというと、税金をたくさん支払うということである。それは企業としてどうなんだろう。株を公開している企業としては、非常にいびつで不自然だ。株主はどうなっちゃってるんだろうと、こういう疑問がわいてくる。配当も払わず、会社は勝手に社員と国に金をばらまいてあとはため込んでる、投資もたいしてしていない、そんなアホな企業に投資をしているような連中だ。私にはそんな企業もナゾなら、ないがしろにされても黙っている株主のほうだってナゾだ。なんなんだろう。まあしりたくもないが。
Text by Tetsuya Ichikawa
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