大学ではアメフトをやってたんだ

 タイトル、もちろん私ではない。J-WAVEのソウルトレインのナビゲーター、りゅうさんともうひとり、私の浪人中の友人、U君である。
 アメフトをやりたがるような男と私は、基本的に友人になるということはあり得ない。のびた(それも変態の)とジャイアンが友達ではないように。うぷ。うぷ、とか言わないし、ジャイアンは。
 学生時代にアメフトをやる(やりたがる)タイプの男と私は、金輪際まるでタイプが違う。しかしそうした違うタイプの者どうしても、深い絆を感じることがある。それは互いを思いやっているということがわかった瞬間である。浪人中のU君はよく私のことを気にかけてくれた。彼から見ると私など命はかない海辺の生物のようなものに見えるのだろう。しばしば干からびそうになっている私を励まして潤してくれたのである。彼はいつも、私の目をしっかりと見て、体の一部を必ず触れながら私を励ました。彼は商社マンを父にもつ帰国子女だったからスキンシップも外国人並だと私は当時思っていたが、それ以上に、いいしれぬ親しみが沸いてきたものだ。
 彼と私の関係は、私が従、彼が主。私が弱、彼が強、私が下、彼が上、そういう優先順位のある状態で最も安泰だった。その後彼は、合格した上智大を卒業して商社へ。商社に勤めて海外をバタバタと行き来し、最近はついにどっかへいったまま音信不通となってしまった。私はといえば、そんな彼を、ただまぶしく眺めるほかない、あいかわらずしがない「水際のイキモノ」のままなのである。最後に彼に会って十年近くたつが、今でも、私に「大丈夫だって、いっちは」といってくれたのを、彼の強い視線とともに思い出すのである。
 きょうのネタはちょっと意味不明でしたね、あはは。いやちょっと、リュウさんが、リスナーにやたらに「俺、学生時代にアメフトをやってたのね」と繰り返すもんだからつい。それに対して(心の中で)「はあ」しかいえない自分が悔しいもんだから、ネタにしてやったのさ。ちなみに私は、「学生時代はミニコミ作ってました」。暗っ。
 さて。電車で人が大勢亡くなったのについて朝日のコメンテーター加藤さんが報道ステーションで「ハインリッヒの法則」のことをいっていたのが印象的だった。はじめて知ったのだが、この法則では致命的な労災は300もの小さなひやり体験が隠れているという。ひとつひとつは怪我もなく大したことはないものの、看過すると結局積み重なってとんでもない災害につながるというわけだ。致命的労災=戦争勃発に置き換えると、自民党の憲法調査会だったか、改憲派政治家連中の怪しげな動きひとつひとつが、300のうちの確実な1をなしていると、つくづく思った。
Text by Tetsuya Ichikawa
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