宮崎駿は現代のモーツアルト!?

 今日は三鷹のジブリ美術館へ行ってみた。ジブリワールドというか、完全に宮崎駿美術館とでもいうべきファンタスティックな施設である。 もちろん美術館ということでアニメ映画の仕組みや歴史、現代アニメが作られるプロセスなどがわかりやすく展示してあり、知的好奇心もバッチリ満たしてくれる。
 私がもっとも感動したのは、宮崎氏による歴代作品の絵コンテであった。
 絵コンテとは、シーンごとに代表的なカットが描かれ、ひとつひとつのそのコマの脇に台詞や音の効果、そして秒数などが指示された、まさに映画の設計書ともいうべきものだ。シーンは一本の映画で千を越える。したがって絵コンテを本にしたものも数百ページと分厚い。その絵コンテのコピーの一冊を手に取ってみた。風邪の谷のナウシカの、Dパート(最後のパート)の最後の方のページをパラパラみていたら、久石譲の例の音楽がわーっと頭の中で鳴り出し、たちまち筆者は言いしれぬ感動の波に押し流され(もっていかれ)、危うく涙を落とすところだった。
 そう、中学校時代に何度も何度も観たあのナウシカの最後のシーンが、見事に再現されているのである。というか、本来は逆である。絵コンテが最初で、絵コンテに基づいてあの感動的なシーンの数々が生み出された。私は映画を最初に見て、その十年以上あとになって絵コンテを見たことになる。今日。
 絵コンテとはなにか、それは、監督が頭の中で想起・イメージしたものを映画化する最初の具現化されたものである。つまり、あの映画は、宮崎氏が頭の中で考えて、絵コンテに落としてはじめて誕生した。無から有が生み出された最初の瞬間が絵コンテなのだ。え?しつこい?もうちょっと。
 数千コマの絵コンテをひとつひとつ考えて描いて、それが映画になって億の売上を上げる、宮崎駿。彼はまさしく現代のモーツアルトなのではないかと思った。
 絵コンテをみて、来場者の多くは圧巻され、そこかしこから「天才だ」「すごい」「信じられない」といった驚嘆のため息が聞こえてくる。私も、本当にすごいものを見せられたときの自分の貧弱な語彙にあきれるばかり、ただただすごい、天才だという言葉しかでてこない。
 このブログではジブリのことにはたびたび触れている。私が心配しているのは、彼がいなくなったあと誰がやるのか、ということだ。
 絵コンテをみる限り、こんな希有壮大な仕事をやってのける駿級の人物などおそらく100年にひとり、それも全世界で数人しか出てこられないと思う。彼は世界的な評価を確立しているが、これほどの絵コンテを描くのだからそのくらいは当然だと思った。逆に言うと、世界でもこれだけのことが出来る人は滅多にいないことを、彼に寄せられる世界的な名声は証明している。したがって、彼の「後継者」などというのはあり得ない。あれはもう誰も後継できない業だ。それくらい宮崎は個性的で突出したある種の天才なのだ。ジブリはもう彼亡き後は終わりに違いない。これは間違いない。絵コンテをみて私はそう、確信せざるを得なかった。
 ああいう、最初こそ儲かるかどうか分からないアニメ作家に莫大な金を投資した徳間康快さん(個人)てホントエライ。しかしそういう人物というのが近年のけちくさいグローバルスタンダードとかいう資本主義でいなくなりつつあるんじゃないのか? 現に徳間だって消えちゃったし。
 これ、と思った才能にお金を投じるという点では、キャットスーツづくりに果敢に挑戦を続けるデザイナー君を支援するAlt-fetish.comはエライですよ、これだって。
 さて、宮崎氏から若干フォーカスを移し、ジブリ美術館とそれを抱く武蔵野について述べてみたい。三鷹駅からジブリ美術館に向かうコミュニティーバスに乗ると、武蔵野の風情が堪能できる。玉川上水は鬱蒼とした木々に覆われている。バスは細い道を通るのだが、とおりに面した家々は瀟洒ながら落ち着いた、それでいてひとつひとつが品のよい主張をしている(都内の戸建てというと最近では超狭い土地にプラモデルのような住宅メーカー製のダサダサの「小屋」がペンシルのように立ち並ぶイメージだがまさにその正反対なのだ)。三鷹に戸建てを構えるのはなかなかの富裕層である。しかし、さすが中央線沿線だけはある。そうしたリッチな門構えの建物のすき間からときおり、ヤバイ廃墟同然の超古いアパートなどが顔をのぞかせて筆者のアドレナリンの分泌を促す。バスはほどなくして住宅街を抜け、吉祥寺通りにでる。五月ということもあり、井の頭公園の緑はまさに萌えていた。
 読者のみなさんにぜひお勧めしたい、ジブリ美術館。チケットはローソンであらかじめ買っておく必要がある。混雑を避けるため、できれば予報が雨の日を狙いたい。夕方になるとひとも減って、さらに堪能できる。客層は平日の場合、カップルが多い。もちろん子供を連れた家族連れがメインではある。
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ナウシカをこよなく愛する市川哲也
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