人は2パターンに別れる。長期的な視点に立って物事を考えるのが好きな人と、その反対に、短期的な視点で物事を考えるのが得意な人。
長期的な視点で考える人を、ロングくん、短期的な視点の人をショートさんと名付けよう。
今日、新聞にはユニークな実験結果がでていた。短期的目標に従事する人はキレやすいが、長期の人はそうではないということ。
株式投資の分野でも、損する確率が五分五分なうえに手数料が確実に試算を目減りさせる短期投資にくらべ、長期投資のほうがリターンはいいことが明らかだ。
ショートさんは、残念ながらビザールプレイには向いていない。ビザールプレイとは、ある目標を設定しそれに向けて頑張るというよりも、むしろそれに至る遠大なプロセスを楽しむことに醍醐味がある。ビザールプレイにおける長期的なゴールというのはもちろん人それぞれだろうけれども、オーガズムと射精がひとつはある。
ロングくんならその点、楽しみを後に後に伸ばす。そうすると、しばらくたって別の楽しみがでてくる。
FPとして、家計簿を付けるようによくこのブログでも言っているけれども、おそらくショートさんには無理だろう。ショートさんは、家計簿を付けたところで、出ていくものは出ていくし、入ってくるものは入ってくる、とか言って、家計簿をバカにする。
それはじつはその通りである。家計簿を付けることが、たとえば自己破産した人とか、任意整理した人に、国が義務づけたりはしない。そうしたところで、合理的に存すると認められる効果がないからだろう。
家計簿を付けると、人によっては憂鬱になってしまうこともある。自分が何となく左前なのが、数値になって客観的に明らかにされる。もう否定しようがなく、「ダメだー」となる。
そういう場合、ロングくんならば強い。長期的に、これを何とかしようと思って、いろいろな手だてを考え、実行できるだろう。
もちろん、家計の危機にどう対処するか、という今日の表題とは矛盾するかも知れないけれども、そもそも家計簿を付けてさえいれば、家計の危機など起こりようがないのである。危機は突発的に起こる予想し得なかった負のリスク。家計簿を付けていれば、そういうリスクにあらかじめ備えられるし、危機が起こらないようにある程度コントロールできる(保険などで)。だから、家計簿を付けていれば、家計の危機は起こらない(もちろん、会社をクビになるとかそういうことはあるけれども、家計簿を付ける人は貯蓄などで備えられるようになる、いやそれはムキになって備えざるをえない)。
こう考えてみると、家計簿を付けることができる人ならば、変態になれる素質があるということだ。逆に言うと、家計簿を付けるような行為は、変態行為と根を同じくする、長期的視野に立つ目標へのプロセスを楽しむ行為なのだ。
それは、公園で、町内会が主催する、朝のラジオ体操に参加し続けるようなものだ。
自分は、ショートさんに近いのだけれども(つまりあまり長期的な視点に立って物事を考えるのになじまない)、ラジオ体操……もとい家計簿を付けてみたいという人もいるかも知れない。
そういう変態志願者のために、FP市川哲也はお役に立ちたいのである。
変態市川哲也はもう家計簿を付けはじめて1年以上になる。1円単位ですべての資産状況が手に取るように分かる。自動引き落としや水道光熱費など維持費の平均も分かるので、もし立ち止まったらどのくらいで破綻するかも毎日分かる。
そのことがすごーくストレスになるみたいで、妻は簿外帳簿作りをはじめてしまった。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com