経営環境厳しさ増すフェティッシュ雑誌

経営環境厳しさ増すフェティッシュ雑誌 今日から日本でも販売開始した、MARQUISの最新号の冒頭で、MARQUISの編集長で社主のピーター氏が「Your favourite fetish magazine needs you!(あなたが大好きなフェティッシュ誌が、あなたを必要としています!)」と題する声明を発表をしています。フェティッシュ誌の経営環境の厳しさが具体的な事例とともに述べられております。普段紳士的なピーターが、こうも赤裸々に購読を訴えるところを見ると、よほど厳しいんだと実感させられます。意訳ですが紹介します。「MARQUISのような雑誌を刊行し続けることが、かつてないほど困難になってきています。紙代や原油価格高騰による諸経費の増大、ドイツの消費税増税など、止むことのない逆風により、今号から13年間変えなかった値段を16ユーロに値上げしました。全世界におけるMARQUISの発行部数も、最盛期の4万から、半減してしまいました。アメリカのディストリビューターは、資金難から私たちに最新号のオーダーを出すこともままならない状況へと立ち至っています。私たちは、もはやMARQUISを刊行し続けることが割に合わなくなる寸前のところまで来ています。もし、あなたの大好きなこのフェティッシュマガジン、MARQUISが消えてなくなって欲しくなければ、どうか御願いです、定期購読してください! あと、店に来てうちの服とかいろいろ買ってください(ドイツのMARQUISの店のことを指している)」
 私としては、ついに来たという感じです。そもそも、MARQUISを入れはじめた2001年頃から、雑誌としては陳腐化していました。なにしろ毎号毎号、ラバーキャットスーツを着た美女たちの写真、それだけなんですから。そんなものはネットを見ればいくらでも、タダで見ることができますから、早晩立ちゆかなくなるに違いない、極論すればそういうことです。ただ、紙にきれいにカラー印刷されたものの価値は、画面で見るのにくらべて普遍的な優位性を持っていますから、その点で一定のポジションは残されているはずです。すべての市場で、ロングテール化しているわけですから、どんな紙媒体だってやり方によっては生き残れます。ただ、MARQUISの場合は、高コストの、従来型雑誌ビジネスのまんまをやっているために、環境悪化をモロに受けているものと思われます。つまり、MARQUISも、部数至上主義で、たくさん売って、広告を稼ぎ、そして印刷費を回収するというモデルです。美しいグラビア印刷、全ページカラー印刷、そして広告の数々を見れば、それは分かります。紙にこんなものを印刷する以上は、毎回数千万円オーダーのコストがかかるのです。これほどのネット時代に、私に言わせればよくぞ成り立っているといった感じです。
 MARQUISの国内販売部数は、2001年のALT-FETISH.com開設後、2003年くらいまでは順調でしたが、それからは下落の一途をたどっております。最近では、一号あたり10部も売れません。MARQUISに対してはミニマムロットがありませんし、市場的にも国内の出版物はロングテールですから、別にALT-FETISH.comとしてはそれでまったくかまいません。しかし、もっともリスクを負担している発行元の厳しさは推して知るべしでしょう。最近MARQUISは年4号を5号に増刊するみたいなことを言っていましたが、実際どうなんでしょうか? モデルは増えているし、イベントも盛況だから、きっとネタに困るようなことはないのでしょうが、印刷コストと販売部数減という環境悪化は今後MARQUISに、そして私たちフェティッシュピープルにどう影響してくるのでしょうか。
 私は最近、荊城チカさんというコスプレイヤーが主催する撮影会に、ラバーキャットスーツを貸し出すというこれまでにない新しい取り組みを経験しました。自分も、当日撮影し、そして家に帰ってキャノンのインクジェットプリンタで、一枚30円近くする専用の印刷用紙に出してみたりして、非常に楽しめました。印刷のクォリティはじつに驚くほど美しく、ものすごい時代になったと驚かざるを得ません。MARQUISのピーターがドイツでやっていること、つまり、美しいラバースーツ姿のモデルとリアルに会話をし、撮影して、そして美しく印刷して楽しみ、自分のメディア(ウェブサイトでも写真画質の紙でもなんでも)で公表するということを、この撮影会に参加したカメラマンは全員、自分で出来てしまったわけです。こんなに楽しいことを、もはやピーター(ましてや市川)のような外部へ委託する理由はどこにもないのです! IT技術の進展で、ピーターがやってきたような出版という大規模でハイリスクなメディア活動、表現活動が、いまや誰でも手軽に、リスクを負うことなく楽しめる時代、それが今日です。そういう中で、MARQUISが部数減に苦しむというのはまことにもって自然な話ではあります。
 こう考えてくると、私たちフェティッシュピープルにはMARQUISの部数減が必ずしも悪いことばかりではないことが分かります。MARQUISだって、あっていいし、買って楽しむ余地というのは間違いなくあるはずです。あんなにきれいな美女はさすがに日本のコスプレ撮影会には現れませんし、背景、照明、コスチューム、メーク、どれを取っても次元が異なりますから。ですから、ハイファッションの世界を鑑賞するという意味で、MARQUISというのがあっていい。一方で、自分で「体験する」という欲求もまた、ITのおかげでカンタンに楽しんでしまってはどうでしょうか。両方楽しむ。もちろん自分も、ラバーを着て、そして作って楽しむ(ALT-FETISH.comではラバーコスチュームや、接着剤などの製作資材の売れ行きは、雑誌の売り上げと反比例して増えています)というのもあります。
 50歳を過ぎた老エディターピーターの嘆きが聞こえてきそうですが、私たちは私たちなりに、新しいフェティッシュカルチャーを作り、そして楽しんでいくことが、ますます今後、期待されます。
 というわけで、MARQUIS最新2号とヘビー・ラバー・マガジン最新号、発売中です。なお、今年の秋までに発売開始をめざして、フェティッシュアカデミー4(以下各誌で盛んに取り上げられています)、ホワイトルーム最新作のDVD2タイトル、鋭意準備中です。ご期待下さい。
 
マーキス No40
マーキス No41
ヘヴィー・ラバー・マガジン No.21
品切れだった人気DVD作品が入荷していますので合わせてお買い求め下さい。
※注目コンテンツ 消費者リポート安いPVCキャットスーツに騙されないための重要知識 掲載中
市川哲也/ALT-FETISH.com
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