人間の残酷さについてサドは言う「悪徳どころか、それは自然がわれわれに印象づける最初の感情である。子供は理性的な年頃に達するずっと以前に、自分のがらがらを壊したり、乳母の乳房を噛んだり、ペットを殺したりするのである。残酷さは動物には本能的なものであって、動物においては自然の法則はわれわれよりはるかにはっきりしていて、野蛮人にあっては文明人よりも自然のほうに近い。それだから残酷さが、堕落の結果であると主張することは不合理であろう。……残酷さは自分のうちにある。われわれはみな残酷の分け前をもって生まれてきているのであって、それは教育のみが修正することができるのである。しかし教育は自然ではない。それは栽培が木に及ぼすのと同様、自然を否定する。……残酷さは、文明によって汚されていない人間の精力以外の何ものでもない」(マルキ・ド・サド ジェフリー・ゴーラ著 大竹勝訳 荒地出版 1966年)
つい最近人間が発明した半導体によって、人間が本来持っていた残酷さが抑えがたい衝動になるほどに目覚めさせられてしまった。
Text by Tetsuya Ichikawa
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