私は昨今の、行政庁(石原)の言いなりで教育委員会が現場の教員に日の丸君が代を強制する事態を非常に憂いていて、何度か憲法との絡みで石原都知事などのアホを批判してきた。
ところが今年秋の園遊会で、こんな事件が。
「東京・元赤坂の赤坂御苑で28日に開催された秋の園遊会で、天皇陛下が招待者との会話の中で、学校現場での日の丸掲揚と君が代斉唱について「強制になるということでないことが望ましいですね」と発言された。棋士で東京都教育委員会委員の米長邦雄さん(61)が「学校に国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と述べたことに対し、陛下が答えた。」
言われた米長さんがどれほど動揺したかを思うとじつに爽快な気分になる。おそらく彼は一生勃起不全となろう。ざまあみろだ。教育の現場で、何ら合理的な理由もないままに、単にアメリカが嫌いだからとか、昔のほうがよかったみたいな瑕疵ある動機に基づいて行政庁が国民に国家や日の丸を強制するのははなはだ不愉快で遺憾なことである。
土建や軍需産業、大手商社など財界はもちろん戦争したくて仕方ないのだが、そうした意図を行政庁を誘導して実施させているのは見え見えで、私のような一市民からみても不自然できわめて気色悪い。だから日の丸君が代強制は当然反対だったが、それがなんと、天皇の言葉から聞かれたわけである。
天皇というのは憲法でやることなすこと全部国事行為として規定されていて、それ以外の行動は全部違憲じゃないかという議論がある。ギチギチ拘束服である憲法をまとったボンデージビザールの象徴、それが天皇だ。そうした法学者の議論をふまえた上で、天皇はさらに一歩踏み込んで、違憲を承知の覚悟で行政へクレームをした。
教育委員が「日の丸君が代を普及させるのが私の任務」などと口にすることの危険性、ヤバさが、当の天皇をもってしても目に余るほどだったというふうに解釈するのが相当だろう。
当の教育委員はもちろんのこと、これに賛同するアホの行政職員、そして石原都知事と戦争をもくろむ輩たちは地団駄を踏んで悔しがっただろうが、まさにざまあみろだ。
だいたいクダらないこと、不当で理解に苦しむ、非合理な不必要なことの立法には熱心なのに、本当に国民に必要とされる法整備は遅れているようだ。
たとえば先日は裁判所で、国民年金の障害給付金の無支給は憲法違反だという判決がでた。その判決文の中で、国会議員はこうした無年金者がでないよう、救済立法を急ぐべきだと言ったようだが、三権分立のこの日本で、司法が立法に、「ひどい有り様だから立法担当はさっさと法律をつくんなさいよ」みたいに口を出すのは先進国としてまさしく恥である。
天皇も、司法も、行政には口を出さないのが鉄則だが、そうした独立した機関が、あまりの立法・行政のダメぶりにクレームを言いだしたわけである。
まさしく戦後60年を経過したこの日本の、制度疲労の象徴とも言うべき、イカンきわまりない事態である。こうした事態は、なんといってもとにかく郵政はやめる(けれども国債はどんどん発行し続ける)、とにかく憲法は変える(けれども弱者救済立法やら議員年金廃止は後回し)といったことばかりに奔走している政治家の救いようのないダメぶりが招いている(もちろんそれは国民のダメぶりと同義だ)。
また、制度を知り尽くした官僚がどんどん私腹を肥やしたり、それにぶら下がる財界だってダメだ。もっと自覚を持って、世界に恥じないような国(おもに立法ということになろう)を作っていかないと、とてもじゃないが日の丸なんて恥ずかしくて表に出せない。日の丸君が代を公の場で強制するなど一億年早い。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com