筆者はこれまでの32年間の人生において、つねに人為的なミス、自ら犯すミスに悩まされ続けてきた。
小中高校時代はテストでケアレスミスばかりしてどうしても100点満点は取れずじまい。成人して就職した出版社時代、多発するミスにすっかり上司が呆れてしまい、いっしょに仕事したくないとまで言われた。最近も、妻から一緒に仕事はしたくないと宣告されるミスを犯した(内容は秘密)。
筆者の場合、ミスはパソコンを使った事務仕事において起こることがほとんどだ。正しい数字を打ち間違える、確認を怠ったために帳票を出し忘れる、郵便物に入れ損ねる、最悪なのは入金消し込みを失念して督促したり、あるいは入金確認自体をせずに未入金を放置するなどだ。被害が甚大だったのは、出版社に勤めていた頃に、印刷する部数を数千部規模で間違えて、余分に作り、数十万円の損を出したことだろうか。
パソコンのエクセルとか、データベースは、前のデータを簡単にコピーペーストすれば一からデータを作る必要がない点が優れている。ところが、日付とか各種のパラメータのうち、変えなければならないものと、変えなくてもいいモノがあり、それらがひとつの帳票に複数あると、必ずひとつはチェック漏れて残ったりする。
パソコンがなまじ得意を自認しているがゆえに、他の人もまあ最初は私に任せれば大丈夫とけっこう任せてくる。そして筆者のプロセスはブラックボックス化する。また、便利で早いので(パソコンを使えばある程度の効率化は誰でも可能)どんどん仕事が増える。業務プロセスのなかで筆者の占めるウエートが高まり、ブラックボックスも増える。
そんな頃、ミスは起こる。
私への信用はがた落ちだ。たったひとつのセルの数字の修正し忘れが、私の全人格、職業人生そのものまでをも否定する事故に発展するのは珍しくも何ともない。パソコン上のミスは、内容を問わず起こる。金額的に甚大な被害をもたらすのも、何の被害をもたらさないのも、同じ数字の誤りから起こる。筆者にとっては、両者は同じ比重であって、そこら辺が他の人から見ると、なんでそんな大切なところを間違えるかなーとなり、ますます信用が毀損される。
そうしたミスに、筆者はどう、対処してきたか。
1.ダブルチェックを依頼する
2.依頼することが物理的に不可能な場合は、チェックシートを作っていちいちチェックする
こんなところである。一度ミスが起こるとひどく落ち込んでしまうが、幸い楽天的なB型のため立ち直りも早い。
そもそも私は自分がミスを犯しやすい間抜け野郎だということを自認しているから、医者だのパイロットだのという、ミスが人命に関わるような仕事には就かないようにしている(ププー、つ「け」ないのが実際)。
だから、犯したミスがたいしたことなく済んでいてよかったと、むしろ自分とミスとの関係には満足しているくらいだ。
『ウエストポイント式仕事の法則』に書いてあったけど、ミスというのはリーダー論においても主要なテーマになりうる。主要というのはちょっといいすぎだけど、部下にミスをさせないようにするにはどうしたらいいかを考えるには、ミスがなぜ起こるか、部下のメンタリティーはどうなっているかを考慮する必要があるだろう。
この本に書いてあったけど(たぶん)、「私はこれまでに一度もミスを犯したことがありません」という入社志望者を、ある有名企業の社長が「じゃああなたは要らない。我が社の数千人の社員が、毎日数千のミスを犯している。そんな彼らに申し訳ない」と断った。
ミスがないひとは進歩もないと、筆者は励まされる一文だったがみなさんはどう読むか。
筆者は長年のミス犯歴を振り返りしみじみ思うが、日々の生活態度、何となくぼーっとして惚(ほう)けていることが多く、運動神経もない筆者は、確実に人よりも脳のある部分が壊れている、これは間違いなさそうだ。これはきっと女に生まれるべきところを男に生まれ(最初のミス)、やむなく変態の道を進んでいる私の人生の現状から照らしても明らかだ。
市川哲也
Alt-fetish.com
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