ホリエモンがニッポン放送株を時間外取引で買って、フジテレビはじめとするフジサンケイグループを傘下におさめようとしていることについて、経団連会長の奥田さんが「堀江さんの『金さえあれば何でもできる』という考えは、日本社会で一番まずい話なので、道徳的におかしいと政財界から非難が出た。堀江さんも甘んじて受けないといけない」といった。
私はこの問題にはふたつの対立が見て取れると考えている。ひとつは世代間対立である。日本社会は超高齢化社会といわれている。日本人の平均年齢は40歳。60歳以上の人口比は先進諸国のあいだでは群を抜いて高く、そのスピードも速い。しかもまもなく団塊世代が大量退職しようとしている。
ジジイ、ババアの国で、堀江がしているのはフジサンケイグループにおいて社員のジジババに支払われ続けている、平均年収1000万を超える高給をリストラし、ライブドアのように平均年収400万に若返らせることだ。そうすれば企業としての魅力は増し、高く売り抜けることができる。
そうしたプロセスで割を食うのはもちろんじじいばばあ、奥田に代表される財界の高齢者たちだ。なぜならリストラされるから。もらってきた既得権益=高給が、いまや堀江に脅かされている。
奥田がいう「日本社会」とは、一面的には「じじいばばあが高給をもらえる社会」のことである。堀江の行動が「いちばんマズイ」のは、自分たちの給料、退職金、年金などの金銭給付が減ってしまう話だから、マズイ。
私は奥田が何を言い出すのか待っていたが、今回のこの発言は、日本社会の世代間対立を一層鮮明に浮き立たせることとなった。
もう一つの対立は世間の王道を行く連中対天の邪鬼連中であろう。堀江世代=私世代。私と堀江は同い年。受験勉強就職活動人口過剰でいつも大競争。中学時代はいじめ、自殺がブーム。バブル崩壊で就職氷河期。社会に出ても暗い90年代。急増する税金、社会保険料と、将来削られ続ける年金。その一方で、退職金で豪遊しようとする団塊世代。もちろんこうした世代のなかにあっても、それこそ大卒後、(早大卒にもかかわらず私は入社試験で落とされたのだが)フジサンケイグループに入社して高給をもらう同世代組というのはいるわけであり、そうした連中にいかに勝かが私らのもはや「生きるテーマ」(さもしいと謂われようがなんだろうが)となっている。
そういう私ら天の邪鬼組のひとつの礎が「金がすべて」というモラルである。これは、長年にわたり、低賃金地獄にさらされたものだけが養うことのできる不屈の精神だ。ナチス帰還ユダヤ人が平和に命を懸けるのに、それは似ている。現代における低賃金とはとてつもない「金儲け主義」培養のプレートにほかならない。もちろん金がすべて教信者のおかげで社会が荒廃して、結局は自分たちだって犯罪被害者に転落するリスクは高まっているということは分かっているが、そうはいっても目先、とりあえず金がすべてに頼るほかない。能力のすべてを市場のちょっとした「誤謬」「ゆがみ」を見つけることに注力し、そこから一挙に巨額の利益を稼ぎ出す、投資家の行動哲学。ホリエモンの天の邪鬼な生き方はその一つの結実だ。
それは素直なまじめなよい人柄、家柄の、同世代の王道勝ち組の価値観からは決して生まれない天の邪鬼の哲学でもある。
ホリエモンは、世代間対立ともう一つ、こうした同世代内の価値観の対立があることも照明した。
そうした意味でホリエモンは有価だと思う。彼にも能力があるのである。能力のある人をつまはじきにする社会を容認し、自分たちの権益こそ重要と主張するジジイの奥田経団連の思想のほうが、よっぽど「日本社会でいちばんマズイ話」だと私はそう思う。もちろんそうは思わない人だってたくさんいるし、そのほうが圧倒的に多かろう。そしてどう思おうと勝手だということもある。また、当の奥田さん本人も、フジのほうが悪い、みたいなことも同時に言ってはいる。
ホリエモンはブログもやっている。その2/6のポストでは「#ちなみに、日曜日の私がレギュラー出演している、平成教育2005予備校は中止にされてしまったようだ。うーん、凄いことやるなあ。そんなのってあり?ありえねーとか思ってしまった。視聴率取れると思うんだけどなあ。まあ録画だけどさ。他局が激しく報道しているのに、フジテレビではほとんど報道されなかったらしいし。これじゃあ政治家に番組内容を歪曲されてしまう、某国営放送と同じじゃないのか。まさかとは思ったが残念である。資本力にあまり影響されるべきではない、報道やら番組構成やらを自ら歪曲してはいけないだろう。」
激しく同意。この国のマスコミなんて所詮こんなもの。金で買いたたくほどの価値しかないということに尽きるだろう。金がすべてとかいって、金の何が悪いんだろう。わたしはFPである。金の話が専門のプロだ(いや、それで食っていないので、プロとはいえないか、汗)。でも全然食えない。一部の金持ちを除いて(!)、日本人は金の話は大嫌いだ。金は村社会の秩序をぶち壊すからだろう。しかしこれだけグローバル化して、海外で日本は売りまくっている以上、カネカネカネ、金の話をもっとどんどんしていかないと。やばいとおもう。
本論へ戻そう。
さて、ライブドア対フジは、裁判へ持ち込まれる見通しとなってきた。会社の支配権維持のために大量増資(発行株数を一挙に倍増)させようとするニッポン放送をライブドアが差し止め訴訟を起こす公算となったのだ。
ニッポン放送=サンケイグループのイヤイヤは、商法では認められておらず、ライブドアの差し止めが勝という見方が一般的のようである。堀江が言うところの「売っているのを買っただけ、何が悪い」、フジの「ライブドアなんかが高い公共性を持つメディアを所有するとはけしからん」
私に言わせればフジがメディアの公共性を掲げるとは噴飯だが。どっちが勝つか、目が離せない。
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Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com
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“日本社会でいちばんマズイ話” への2件のフィードバック
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待っていました。一連のニッポン放送問題にどのようなコメントが出るのか楽しみにしていました。私は経済に関しては全くの素人。ましてや株のこととなると手も足も出ない状態です。でも、この問題には経済問題だけではくくれないものがあることは素人にも分かります。
おっしゃる通り、この問題には世代間の埋められない溝が根底にあるんだと思います。でもそれだけではないようにも思います。フジサンケイグループというマスコミの中では異様なグループの異質さも感じてしまいます。
でも堀江社長もちょっと運がないかなあ…もう少しうまくやる方法はなかったものかなあと素人は思ってしまいます。
海月も一連の騒動の顛末には注目していますが、確かに堀江社長の思想の基盤には共感を覚える部分が多々あります。
だけど、shin2さんのおっしゃられる通り、一寸(世間全般に対する?)攻防パターンがマズイところがある様な気がします。もとい、マズイと言うか少しラフ・ファイトのきらいが有ると言うか・・・。
こういう展開になった以上目が離せないのは言うまでも有りませんが、下手をうつと四面楚歌になる危険性も有るんじゃないかと危惧してしまう海月です(・・;