みんな強い目的意識があり、新刊を買うサークルをあらかじめ決めてやってきている。
Alt-fetish.comはボークスの人形にキャットスーツを着せて展示し、キャットスーツを販売している旨アピールしたが、結局一着も売れなかった。
希望のサークルで希望の新刊を買うのにはかなりのエネルギーが必要とされているみたいで、みんなヘトヘトで、普通のサークルを回っている人たちの目は疲労で死んでいた。何しろサークルは一日で約7000、来場者数は18万人に及ぶという。
そうした中で目立つためにはかなり細かく彼らの欲求にアピールするものを、新奇性とともに提出しないといけないと思う。
Alt-fetish.comは西洋ヨーロッパのボンデージファッションを、身体美の追究という文脈の中で紹介している(へー、そうなんだ)。コミケでは売れ筋と推定される幼児性愛、キャラクター、アニメ、ロボット、そういうのとは無縁なだけに、ほとんどリアクションを得られることなく終わった。しかし今日90センチの幅のAlt-fetish.comのスペースの前を通過した数千人の中で、ひとりでもこのサイトを訪れてくれたとしたならば、成功と信じたい。
コミケ市場においてどんなに欲求がデフォルメされたとしても、人間の性器はかれこれ数万年間、その形を変えていない。人間身体の持つ美しさにみんな気づいてもっとそれに注目してみてはどうか?そうすればいとも簡単に普遍的な快楽に触れることができるのではないか。そういう旨のコピーを紙に印刷して表示したけれども、何百人というヒトが猛烈な欲求に突き動かされて通過して行くばかりのAlt-fetish.comのスペースの前に、およそそんなものを読むような雰囲気はついに訪れなかった。
Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com