Gear Fetish ギアフェティッシュ Vol.1
ボンデージ。BDSM。この魅惑の言葉たち。私はインターネット黎明期の90年代初め頃からなんどとなく、このキーワードで検索してきました。今から二十年前なら、この言葉のもつ特別な意味が、深く重く私の心を震わせたものです。それはすべてにおいてコストがかかり、仰々しくて本格的な設備が必要で(たとえば六本木のホテルアルファイン)、数万円を支払わなければ口を利く機会すら得られない先達たちの指南のもとにたしなめる、完全なる大人の趣味の道でした。そしてもちろん、国内に私が求めるボンデージのリソース自体がありませんでした。縄ばっかりでね。縄じゃないんです。アイアンなんです。鉄、鉄と鎖。もっぱらこういうラバーと鉄は海外のネットを漁るほか、拝むことはできませんでした。
そして時は流れ平成もテン年代に入り、ゼロ年代中盤からアメリカでジャーナリストに指摘されてきた世界的潮流、「フラット化」がこのボンデージの世界にも押し寄せました。ITの力で、とりわけ途上国において、あらゆるリソースを格安の値段で、誰にでも公平に利用できるようになるという、フラット化の力。ボンデージ途上国だった日本でも、このフラット化の恩恵を受けた男がいます。何を隠そう不肖市川哲也。これらの写真を見てください!
安い、安い、安い!! 何もかもが安い!
従来こうした写真を撮るにはたいへんなコストがかかったものです。しかし、今日ではもう(近所のホームセンターで一本数百円から売っている)足場パイプ数本と、スタジオレンタル料金の合わせて1万円ちょっとでできちゃいます。デジタルカメラで撮影した写真の加工もフォトレタッチソフトであっという間。撮影からウェブに上げるまで、ものの数時間しかかかりませんでした。単管組み方超簡単、ポーズもネットのフェチ画像でいくらでも参考資料が得られます、それも無料で。
さて、肝心の写真の説明ですが、まず!私が着ている服はなんだと思いますか? 「シナゴム商事」などと同業者にバカにされるまでに、中国製品の販売シェアが上がっているALT-FETISH.comなのですが、市川が着ているのはなんと!BLACKSTYLEの0.35ミリのXSサイズのラバーキャットスーツ、定価37,800円です。
http://www.alt-fetish.jp/25_800.html
なぜか? BLACKSTYLEのXS0.35ミリは私の体型にぴったり合う唯一の既製品。匂いも素敵な4Dラバーのものだからです。中国製は残念ながらそうじゃないですね。そして、BLACKSTYLEの着心地ですが、時間が経つにつれてラバピカがこの高級な4Dラバーになじみ、ずっと消えない光沢を放ちはじめます。とってもしなやかで伸びもよく、まさに第二の皮膚そのもの。中国のものには絶対に得られない高い満足感が得られます。皆さんも、お金を貯めて、高ーいBLACKSTYLEのキャットスーツ、ぜひいつの日か、挑戦してみてくださいね!!! 既製品サイズを選ぶコツは、サイズが小さめの薄手のものを選ぶことです(ただサイズは必ずBLACKSTYLEのサイトで確認してください)。
顔にピッタリと着けているのは、Simon.Oの目がボツボツに穴が空けられた、いわゆる蜂の巣アイのマスクです。この目が点々になっているラバーマスクが、ここ数年の私のツボなんです。数年前から、ポツポツとお客様から取り寄せの依頼が入るようになったんですが、あまりピンと来ませんでした。でも、ラバーフェチの同人作家が書いたあるラバーエロ漫画を読んでから、すっかりツボにはまりました。口だけ出てるのがいやらしいんです。
写真のポーズは3種類あります。一番最初は、バイクにまたがっているポーズ。私のラバーフェチ道は革ツナギライダー姉ちゃんが起源であります。それ故、なんとしてでもこういう格好でバイクに乗りたい。ただバイクの免許は家族に反対されて取れないので、自分で単管組んでやってみました。単管組んで私服でまたがってるときは、ラバー着て乗ったときを想像して勃起したけど、なぜか本番では勃起しなかった。意外に重力がかかって足も股裂気味でつらかったです。人によってはいいと思います。
もう二つのポーズは、十字架張りつけ状態のポーズと四つん這いのポーズです。十字架のポーズは、上体が微妙に前に反った状態になっていてこれまたキツイ。四つん這いはまあまあいいです。四つん這いはちなみに懇意にしていただいているお客様ご提案のスタイルです。
すべてのポーズに共通して言える感想ですが。期待に反して残念なものとなっております。つまり、ラバーキャットスーツ着て、重たいヘルメットをかぶり、息はガスマスク着けてるからシューハー苦しいし、チェーンは重いわで、性的な興奮とはまったく縁のない精神状態。おまけに、単管をつなぐ直交クランプから落ちた、小さな金属バリが足の裏に刺さったりして(そしてそれを取るためにラバーのグローブを外したりしてるうちに)チンポ激萎(な)え。写真見て興奮した人には申し訳ないが、私は(モデルとしては)まったく興奮していないし、おそらく二度とやりません。酷っ。だってキツいんだもん。それにこの装備の設営と撤収。6時間はかかった。あり得ません!オナニーに6時間は。
そう、なんといってもフラット化してめでたくひとり暮らし家庭のコモディティになったボンデージの目的って、オナニーなんですよ私の場合。だからその一瞬の刹那めがけて数時間かかるっていうだけであり得ない。効率的じゃない。それにそのあとの片付けが何これ現場労働? 日雇い仕事? 給料出ないのに?
こうなると、私、本当にラバー着て興奮できる設定、装置って一体何だろうなと分からなくなってきた。二十年以上夢に見てきたバイクにまたがるポーズもいまいちだったし(じつは密かに大ショック)。いやーでも、もしかすると、こうした目的を超えた労働の果てに、何かものすごいカタルシスが潜んでいるのかもしれない。皆さんはその境地を見つけられそうですか?
ちなみにこの文章の前後に写真を掲載していますがラバーマスクはRubber's Finestのものです。サイズは男性用の2です。テヘ。これに口元は販売終了してだいぶ経ったDEMASKのダブルインレットガスマスクを合わせます。かっこいいですよね。販売終了は本当に残念です! ヘルメットは東八道路沿いのハードオフで3150円で買ってきた誰かの中古品でした。
面識のある方へ! キモくてごめん。感想はメールください
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