コスプレイヤーがはじめてラバーをまとった日
ドレッシング・フォー・プレジャー(快楽追求のための着衣)というラバーコスチュームのファンジン(マガジンというほどの部数のない、同人誌的雑誌媒体)が昔イギリスでありました。素人がプライベートでラバーを着ている投稿写真だった記憶があります。印象的なのは、かなり年齢がいっている、日本でいうところの団塊世代や、髪に白いものが目立つおじいさんとかおばさんが臆面もなくラバー姿をさらしている写真の数々でした。写真に写る彼らの表情からは、年齢や着ている服がラバーという変態ジャンルのものであることを感じさせないほど、素の「ハピネス」に満ちていたものです。
私たちはラバーを着るということがどれほど快楽に結びついているか(結びついてしまうか)、いやというほど認識しています。私たちほど強迫的ではないものの、じつはアキバ系のコスプレイヤーたちも着ることによろこびを見いだす種類の人たちです。私たちからすれば、同じ着るよろこびを見いだすなら、そのキャラクターのコスチュームに、ではなく、ラバースーツに、その快楽の萌芽を見いだしてもらえないだろうか?そういうふうに思うわけです。そうすれば、なにかがおおきく、かわるんじゃないかと。もちろん、いい方向にです。
そして、昨日、ある偶然から、そんな私たちラバーフェティシストの妄想に応えてくれる希有なコスプレイヤーと出会うことができました。彼女の名前は荊城(しじょう)チカさん。ラバーキャットスーツウェアラー(私の造語、高価で着るのに若干のテクニックと人手と出費と手間と忍耐が要るラバーキャットスーツを着ることが出来る人)としては二十代前半とたいへん若い、美女です。彼女の略歴は次のようなものです。
「自身が代表を務める衣装ブランド『REPLICANT CELL』やモデル活動を経て各メディアで取り上げられるカリスマコスプレイヤーとなる。その活動はコスプレの枠を超え『第16回東京国際映画祭』でのステージダンサーに抜擢されたり『関ジャニ』等のTV出演も果たす。現在は自身が主催する撮影会『REPLICANT
LAB』ではキャスティングもこなし60名以上ものモデル・コスプレイヤーが在籍する。」
たいへん経験豊富で著名な彼女が、あえてこの難易度の高いコスチュームに挑んだのは、とりもなおさず、ラバースーツが本源的に備える「美しさ」の可能性に彼女が敏感に気がついたからです。彼女は、撮影に際しこう述べています。
(市川哲也)撮影のきっかけは?
(チカ)すれ違いという刹那の出会いが、市川氏を知り、また今回ラバーに触れる機会を生んでくれました。
(市川哲也)普段の仕事は?
(チカ)普段、私はコスプレイヤーとして生計を立てております。ゲームやアニメ等の所謂アキバ系が、コスプレイヤーとしての私を育てた古巣ではありますが、今や”衣装を着る事を楽しみ”という幅広い捕らえ方に至っております。
(市川哲也)普段のコスプレで着るものとはまったく異なるラバースーツを着た感想は?
(チカ)俗に言うコスプレは、幼少の時に経験済みの方も多いかと思われますが、ごっこ遊びと等しく、衣装を着ることによって、そのキャラクターに心身ともに溺れる行為だと私は認識しております。ラバーにもそれと近しい魅力があるのでは、と初体験ながらに感じました。今回の経験で、ラバーも一衣装として私に彩りを与えてくれる強力なアイテムになったと言えるでしょう。これからもALT-FETISH.comさんを通して新たな自分に遭遇出来る事を望んでおります。
───いかがでしょうか。私たちは、いまもしかすると、ラバーフェティッシュの歴史の重大な局面に立ち会っているのかも知れません。それは、この日本国のラバーフェティッシュの世界におけるあるまったく新しい勢力の登場にほかなりません。すなわち、ラバーをもっぱら自分の美の領域を発展させるツールとして、何ら偏見なくあっけらかんと取り入れる若い世代の登場です。
私のこのやや大げさな表現は、はたして過分なのでしょうか? 私はそうは思いません。なぜならチカさんは、みずからラバーを着こなすビューティを備えなおかつ、覚悟を持ってラバースーツを着、そして、コスプレを愛好する若い人たちに一定の影響力をお持ちの方だからです。「そのとき歴史が動いた」───私たちはあとで、そう思い返すかも、知れません。それは、これら彼女のラバースーツ勇姿を見たとき、まさにあなたの確信となることでしょう。
2007.3月、市川哲也撮影。モデル 荊城チカ。http://www.shizyo.info/
衣装:SALO(ラバーキャットスーツ) Rubber's Finest(ラバーマスク) Demask(ネックコルセット) BLACKSTYLE(グローブ、腕輪) その他参考商品(ラバースーツのうえに重ね着しているアイテム、ブーツなど)