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インタビューの意義

独占インタビューを敢行したのには、特別な理由がある。これまで、ラバーを好んで着る女性で、ALT-FETISH.comにカミングアウトしてきた人たちの多くは、SMの経験があったり、ゴスロリやコスプレといった偏った趣味を持っていたり、音楽や服装の趣味から派生的にラバーに関心をもったりする人たちだった。しかし、なんこさんは、職業は服の販売で、別段SMをやっていたり、オタク的な趣味を持っているわけでもない。いわばまるっきりニュートラルな状態の、普通の女性なのである。本人は「変態」といっているが、その内容は決して「縄縛り」とか「出血プレイ」「スカトロ」のような陳腐で出尽くされたものではなく、自分なりの方法で、性快楽を最大に楽しもうとしているに過ぎない。だからラバーを最初から否定もしないし、かといってラバーだけに耽溺もしない。あくまで、センスはニュートラル。そういった意味でなんこさんは、たいへん貴重な女性───これがインタビューをしなければならなかった、特別な理由である。そんななんこさんだが、この特集のテーマでもある「愛」が、ラバーへの思いに深く関与していることが明らかになる。もしも、この特集の「愛」という部分をよく理解できるならば、最愛のパートナーと、そして最愛のラバーを着た最高のひとときを楽しむ可能性が、読者ひとりひとりにきっと開けてくると私はそう確信している。後半はかぼすさんのインタビューも掲載。

◆リスクが高いほど変態度がある

市川哲也(以後I):最初にALT-FETISH.comのサイトを見たときの印象を教えてください。
なんこ(以後N):いわゆる変態臭さもなく、内容は初心者の私でも引き込まれるような文章がたくさんあって、とても好感もてました。私自身は「変態だ」と自負しておりますが(笑)

市川:なんこさんは、ご自身を変態とおっしゃいますが、どのようなところが変態だと自覚されていますか? 他の変態ではない女性一般となんこさんを区別する最大の点とはなんでしょうか?
なんこ:どこからが変態かは、各々でボーダーラインがあるでしょうから明確に言えるかはわからないのですが、まず性的な意味での変態とは人には言えないような、一般的に理解を得づらいことをしていること、人が何と言おうと、好きでそのプレイなり趣向なりを突き進むこと、でしょうね。他人が理解できないようなことに快感を覚えて、それを自分のものにできているのは変態としての定義かと思っています。またその行為によって得る「リスク」が高いほど変態度があるし、より興奮できる(ハイリターン)かもしれませんね。ですからこうした「理解できないような行為によるハイリスク・ハイリターン」を好むのはほかのいわゆる一般女性とは異なると思います。どんな行為かは……秘密です(笑)

市川:ALT-FETISH.com閲覧者のほとんどは男性ラバーフェティシストです。彼らは、ラバーのてらてらと黒光りする外観と、皮膚にラバーが密着した、きつくて息苦しい状態が相まって、異様に性的に興奮することをラバーフェティシズムと認識しています。なんこさんにとってのラバーフェティシズムとはなんですか?(どういう状態のことをいいますか?)
なんこ:まず、映像や音声といったツールでは満足できなくなった時、自分で実践したい・体感したい・実感したい欲求にかられるのが人間というものなのでしょうか……。そのうえで生身の自分で得られる興奮の限界があるとすれば、興奮できるツールを外に求めればその限界を延ばすどころか超えてしまえるのではないかと。そのツールに選んだのがラバーであり、興奮の度合いが強いほどツール自体に傾倒してゆくのがフェティシズムなのではないでしょうか。また興奮へ行き着くまでの想像が、より性的なものと直結しにくいものの方がフェティッシュな気がします。バイブとキュウリみたいなもんです(笑) 選ぶツールがラバーになるのは、個人の形成されゆく環境にもよるのでしょうけれども。男性が多いのは、恐らくラバーフェティシズムに限らずでしょうね。「体感したい」欲求が女性よりも遥かに強いのでしょう。
 また「きつく息苦しい状態」に興奮するのは怖い絶叫マシンに乗るようなもので、自分が追い詰められることで興奮を得る方法の一つでしょうね。通常の性行為においても、追い詰められる感覚は興奮するためには欠かせなかったりします。呼吸が荒くなる自体が性的興奮時に起こる作用なので、ラバーによって強制的に自分をその状態へ落とす効果もあるような気がします。ですから、ラバーを抜きに考えてみれば特別異常なことでもないのでは……とも思うのです。

市川:なんこさんは、いわゆるラバーフェティシストだと自分で思いますか? ラバーを着て興奮してしまった理由はなんでしょうか?
なんこ:窒息プレイなどは未経験なのですが、どうでしょうね(笑) ラバーフェティシストとしての概念の枠を拡げて頂ければその端くれには入れて頂きたく思います。ラバーを着て興奮してしまったのは、もちろんそのスタイリッシュな外観もそうなのですが私の願望であった「彼の手の届かない存在になる」ことが叶ったことですね。

◆ラバーは具現化されたわたしの願望そのもの

市川:ラバーを着て「彼の手の届かない存在」になれた、とはどういうことですか? またそのことで興奮した、というのはなぜですか?
なんこ:私のブログ★1、またフェティッシュジャーナル★2でも取り上げていただきましたが、恋愛において、女性は男性を追いかけるよりも追いかけられたい願望があると思います。私もそうで、彼を追いかけているような日々に感じていました。実際はそんなことはなくても、そういう感覚だったということです。私が彼を追い求める以上に、彼から追い求められたい……ラバーキャットスーツで本当の私を包み隠し、一切「私」を遮断することで彼はラバーに閉じ込めた「私」を求めてきたんです。強く強く……。
 ラバーを着て、裸の彼とセックスしても彼は私の肌に触れられませんし、私の心にも届かなかったのです。こうして私の願いであった「追い求められる」つまりは「手のとどかないほどの存在」になることで彼の私を求める気持ちを強められたわけです。
 ラバーは具現化されたわたしの願望そのもののような気がします。

市川:幼少期の性にまつわる体験はありますか? 初体験の年齢はいつですか? またそうした性体験が現在のラバーフェティシズムに何らかの影響を及ぼしていることはありますか。
なんこ:初体験は19歳でした。小さい頃に男性に追いかけられたりということは何度かありました。中学の頃、同級生に集団で触られるようなこともありました。性体験とまではいきませんが……。そのせいで男性に対して恐怖心があったのと同時に、男性に対して強くあろうとする自分が生まれたのも事実で、男性の征服欲に従うかわいい女であろうとする反面、男性が自分の手の内にあったら……、という願望はあるかもしれません(笑) ですから今の彼を追いかけるより、追いかけられたいのですよ。ラバーを着ると、それを実現できる、より強い女になれる気がしますね。

◆ラバーフェティシズムのきっかけ

市川:ラバーフェティシズム(ラバーキャットスーツなどを着る変態カテゴリー)というのがあると知った時期ときっかけを教えてください。
なんこ:これは実はかなり小さい時なんです。小学生とか……そのくらいです。父の本棚で見つけたのかしら?(笑) 家に「かんぷらちんき」(たしかそんなタイトル)という小説があって
内容は殆ど覚えていないのですが、その中でラバーを使った性行為のくだりがあったのを覚えています。文章で覚えているわけではないのですが、今でも覚えているのが「ラバーを上に敷いた三角木馬にまたがる」というような文章です。なんの小説だったのでしょう?(笑) マセた子供でした。

市川:ラバーがクールでかっこいいと思えるためには「かんぷらちんき」以外にどのような作品の影響があると思われますか?(映画・テレビ・小説など、何でも)
なんこ:「かんぷらちんき」ではあまりクールなイメージは無かったです。単に「ラバー愛好」という世界があるのを知っただけでした。有名な映画でなら「マトリックス」でしょうか……主人公の恋人(トリニティー)がキャットスーツみたいな感じのを着ていたはずです。マトリックスの2作目では、モニカ・ベルッチが白っぽいピタピタのドレスを着て登場するシーンがありましたが、あれもラバーっぽかったです。雑誌のインタビューで「着るのが大変だった」と語っていました(笑)あとはそうですね……ベタですがルパン三世の峰不二子、ですかね。キャットスーツ着ているシーンがあった気がします。女性なら憧れますから、不二子ちゃんは(笑) 映像だと、素材が何であるかまではわからないのですが、ビザールなデザインだけを見れば結構溢れていると思います。

市川:今回、高額なラバーキャットスーツを着ることになった経緯を教えてください。最初にキャットスーツという話題がふたりのあいだで出たときの状況を再現してください。
なんこ:確か私がボンテージだかランジェリー系ショップのサイトを見ていてピッタリと体にフィットしたオールインワンタイプのコスチュームが「キャットスーツ」という名前だということを知ってそこから辿っていったことからでした。もともといわゆる「ツナギ」タイプの服は好きで普段から着たりしていたんです。キャットスーツを知った時に彼に「こんなの着てみたいの」と話したところ、彼も「なんこが着たところ見たい」とノッくれたわけです。ちょうど彼がボーナスがでる前で、Alt-fetish.com★3を見つけていろいろと見ているうちに彼が「買ってあげたい」と言ってくれまして……。高額ですし、遠慮していたのですが、彼のほうが見たい!見たい!と積極的になってくれたのが購入して着用してみることまでに至った経緯ですね。

市川:スーツ実物をはじめて見たときの印象はどんなでしたか?
なんこ:小さな箱に収まっていて驚きました(笑) 車の中で待ちきれずに開けてしまったのですが、すでに何か興奮していました。腕だけ通してみたり……。頭の中にあるイメージ通りに着られるのか、わくわくした気持ちでいっぱいでした。

市川:はじめてきてみてどんな気分になりましたか?そのときに、彼氏がそばにいたわけですが、もしいなかったらどうでしょうか?
なんこ:初めて着たときは、あまりにも着るのに苦労したので正直失敗した? と思ったんですよ(笑) でもファスナーを最後に上まで上げたときにはすっかり気に入ってしまった自分がいました。居なかったら……さみしいです(笑) 当初はやはり、彼に見てもらいたい気持ちでいっぱいだったので……。

市川:キャットスーツを着るときに、何らかの打算がありましたか? それとも純粋に着たかったのですか?
なんこ:打算……というとピンときませんが、これを着た姿に彼が喜ぶかどうかを考えていましたね。もちろん自分が単純に着てみたかったわけですが、「これを着た姿を見て興奮する彼を見ることで自分が興奮する……」はじめはそんな想定だったのですが、後にそうではないことに
なってしまったわけです(笑)

市川:今回彼氏がラバースーツを買わなければ、自分で買うということは想定できますか。
なんこ:どうでしょう(笑) 確かに高額ですが、「服」にお金を使う感覚で買っていたかもしれないです(笑)

市川:ALT-FETISH.comのお客様にも、恋人もパートナーもいない方が一人で自分のために自分で買うケースがあります。そうした人たちとなんこさんが、違う点および共通点を教えてください。
なんこ:違う点……これは彼と過ごす時間の中にラバーフェティシズムを持ち込んだ、ということでしょう。彼とのセックスと切り離さずに取り込んでしまったのです。先にも書きましたが、パートナーがいるということは、相手の反応がどんなものなのかが一番最初なのですよ。一般的なコスチュームプレイなどはほぼそこから入るのだと思います。もちろん純粋に興奮してくれるかどうかも気になるのですが、こうしたフェティシズムを自分が持っていることを相手が知ったとして、その後の関係・自分への接し方が変わってしまうのではないかなど、パートナーがいると考えざるを得ない部分があります。これは恋人がいるフェティシストの方でも、相手に明かせないがために自分で楽しむために買うことはあるでしょうね。私の場合は彼がとても理解ある方なので、こうした不安を経てはいませんけれども。
 共通点は、たとえ私が彼との時間に持ち込んだとしても、ラバースーツを着用した自分は「自分の世界」であるということでしょうか。彼と時間を共有しているにもかかわらず、です。「ラバーを着た自分に興奮する」 これは他の方々とおそらく同じではないかと考えています。

◆自分自身に興奮しているということに気がついた

市川:二回、三回と着ていくうちに気がついたことはありますか? 自分の気持ちには変化が生まれましたか?
なんこ:深くない点でいうと、何度か着るうちに、フィットしないと納得できないと思うようになったことですね(笑) 大きな変化だと思ったのは、当初彼の興奮したを見ることで自分が興奮するのだと予測していたのが、自分が自分自身に興奮しているということに気がついたことですね。彼の存在は認識できても、まるで視界にはいらないような(笑)

市川:「フィットしないと納得できなくなった」とのことですが、フィットしない部分はありますか?(この質問は今後の商品デザインの改善に役立てようと思います)
なんこ:一番なのは「肩」です。足先から入れていって、肩を入れますよね。肩が一番ラバーを引っ張っている位置が体の中で高いので、肩のハマリが甘いとラバーに緩みがでてしまって……。私はXSを着ていますが、それでも肩と袖のつなぎが少し浮いてしまうんで、本人の体型の限界と着方がまだ下手なのかもしれませんが(笑)

市川:通常のセックスと、ラバーを着てするセックスはどのように違いますか。
なんこ:ラバーを着るのは私だけで、着た者同士だとまた違うでしょうけれども、私たちの場合は通常のセックスではお互いの肌と肌が直接触れ合います。肌を通して確かめ合えるわけです。ですが、ラバーで覆ってしまえばそうはいかない。彼は私を抱いているのに、私という人間への感触が遠ざかるのですね。対人間ではなく、対物のような感覚と言えばよいでしょうか。行為としてはセックスなのですが、お互いの性器を使った「オナニー」のような感覚です。ラバーを介したセックスでは、気持ちがどうとかは関係なくなってしまいますね。

◆ラバーを着たオナニー

市川:普段オナニーをすることはありますか?
なんこ:彼と付き合うようになってからはしなくなりましたね(笑) 自分でしても、大して気持ちよくないので……。

市川:一人でいるときに、わざわざラバーを引っ張り出してきてオナニーをしたりすることはあり得ますか?
なんこ:キャットスーツは彼に預けているので想像になりますが、オナニーするためにラバーを着ることはないかもしれません。オナニーしようという気持ちがないので(笑) 「ちょっと着ちゃおうかな」と思ってきてみることはあるでしょうね。着てみた結果、「なんだかしたくなっちゃった」ということになりそうです。ラバーを着るとセックスよりオナニーしたくなるのが不思議です。

市川:ラバーキャットスーツを中心に考えますと、目的としてはじめにオナニーをしようというよりも、目的としてまずラバーキャットスーツを着て「変身」してみようというのがあって、その結果オナニーに至ることもあるということですか。
なんこ:私の場合はそうですね。「ラバーを着てオナニーしたいな」と思う過程はあるかもしれませんが、「オナニーしたいからラバーを着よう」というのではないですね。似ていますが、違うのですよ。「オナニー=ラバー着用」ではない、ということでしょうか。まずはラバーを、着用後の行動はその時によって……という具合です(笑)

市川:ラバーを着てするオナニーと、そうではないオナニーとでは、どのように違いますか?
なんこ:ラバーを着てのオナニーは、自分に陶酔しやすいと思いますね。通常のオナニーのように、想像したり、何かを見て興奮するのでもなく、あくまでラバーを着た自分にまず興奮するのではないでしょうか。

市川:男性と女性とでは、ラバーフェティシズムの中身に違いはあるのでしょうか?
なんこ:難しいご質問ですね……初心者の私が答えてよいのでしょうか……(笑) ファッション感度でいえば、女性のほうが高いと思われるので、見た目を追求するとしたら女性のほうかもしれませんね。デザインも豊富なようですし。男性はラバーの持てる拘束感や閉塞感・プレイそのものを追求していくような気がしますが……。通常男性のほうが視覚による興奮を得やすいと思いますが、ラバーフェティシズムにおいては逆転している場合もあるようで。女性は自身で体感するよりも、ラバーに身を包んだ人間をみて興奮したり、男性で言えば自らをラバーで包む方が多いとか。例えば男性の女装趣味なども「体感」する欲求が、視覚による興奮を遥かに凌いでいるために実践しているのでしょうから。一概に言えるわけではありませんが。

市川:ラバーキャットスーツを着ると必ず性的な行為に至る感じですか?
なんこ:今のところはそうでもないです。エロティックなポーズはしたくなりますが(笑) 彼が写真を撮りたがるので、抑えているのかもしれないです。

市川:裸の男性とラバーを着た男性とではどちらにより性的な魅力を感じますか?
なんこ:これがですね、見た目にはあまり性的魅力は感じないのです(笑)ですから裸であろうとラバーを着ていようとあまり変わらないです。多分、裸なら裸の、ラバーならラバーを着た時なりの雰囲気だとか動作があると思いますが、それらが私の感性に響けば性的な魅力として感じるのだと思います。要は「身のこなし」といったところですね。

市川:ラバーフェティシズムを実践するために特定の相手や場所が必要と思いますか?
なんこ:特定の相手は、居ても居なくても良いと思います。私は居て欲しいですけれども(笑) プレイによっては必要だ、くらいに考えていいのではないでしょうか。場所は……どうでしょう? 私はラバーを着た自分を含む空間全体を見て欲しいので、ふさわしい場所、この姿が映える場所を選びたい方ですね。ですがラバーを着てふらふらしたい願望もあるので特定の場所というと無いのかもしれません。

市川:ラバーフェティシズムにおいては、パートナーにはどんな人がふさわしいですか?
なんこ:自分が相手もフェティシストであってほしいかどうかにもよりますが、探究心・研究心がある方、観察力のある方、ご自分も何か「変態」である方、でしょうか。何故かについてはこれをお読みになる方ご自身で考えていただきたいので敢えて控えさせていただきます(笑)

市川:ラバーフェティシズム以外にも、さまざまな性の世界を探求されているお二人ですが、これまでいちばんしっくりきたものや方法はありますか?
なんこ:これはもう……アンダーヘアーをつるつるに剃りあげたセックスですね。私だけでなく、彼も全部剃ってます(笑) ビジュアル的興奮などはいまやどうでもよく、密着感によって得る快感のほうが遥かに強いですね。ラバーを直に着るのに毛が邪魔なので、一石二鳥ですし。

市川:ラバーキャットスーツには、卑猥なイメージがありますか?
なんこ:卑猥、というイメージはありません。露骨さが感じられないからでしょうか?クールなイメージが先行していますね。

市川:ラバースーツだけだと物足りなくなるのですが、なんこさんはどうですか?次に欲しいアイテムはありますか?
なんこ:すでに物足りないです。フル装備したいです(笑) ブーツ、マスク、コルセットは揃えたいですね。キャットスーツなので尻尾とかあったらいいな〜。なんて……かわいいけどクールでは無いですかね(笑)

◆これからの展望とアドバイス

市川:今後、キャットスーツに加えて、マスクやブーツ、コルセットをそろえたいとのことですが、それらフルコーディネートをする目的は、より拘束感を得たい、より刺激的なビジュアルとなって彼氏を魅了し、自分も興奮したいということですか?
なんこ:う〜ん、今は目的はあまり考えてはいません。単純にラバーを着た私にもいろいろなバージョンを持たせたら……という好奇心からですね。かっこいいですから(笑) ラバーによって得られる興奮は、私と彼にとっては少々歪んだ興奮(とでもいいますか)だと思っています。私たちには最高のセックスは裸で、という意識があるからこそラバーはラバーで楽しめているのでしょう。それに、これ以上彼を置いてきぼりにはできませんから、何事もバランスですよね。もっと彼をどうにもならなくしたい!という気持ちが無くは無いのですが、今後はあまり目論見は持たずに楽しみたいと思っています。

市川:ラバーキャットスーツやグローブといった「ビザールアイテム」をスタイリッシュに着こなすコツはありますか?
なんこ:私がスタイリッシュに着こなせているのか分かりませんが……。思いきりこの世界に浸るというか、自分でフェティッシュな空間をつくる気で私は袖を通しています。なぜか背筋を意識したり、所作も変わってきますね。動作を大胆にしたほうが格好いい気がします。キャットスーツを着たのにトボトボ歩いてしまうと「負けてしまった敵キャラ」みたいじゃありませんか?(笑) あとはイメージを持つことが良いかもしれません。

市川:それは、どのようなイメージですか?
なんこ:自分の気に入っているラバーをまとった画像でもいいですし、映画などで着ているシーンでもよいと思います。「こういう感じにしたいなぁ」と思ったことを実践してみるのです。もちろんラバー自体の魅力(テカリやフィット感)をイメージしてもよいでしょうね。それを生かすポーズなり動作なりを生み出していけますから。

市川:現在のご職業がラバーフェティシズムに影響していることはありますか?
なんこ:そうですね、「着る」ということ自体が好きなので。仕事柄こだわりはかなり強いです。あるブランドの洋服を販売しているのですが、デザインが結構凝っているんですよ。素材はラバーではもちろんありませんが、コルセット風であったり体のラインを強調するようなデザインであったり。普段からシルエットがフィット&タイトな服は好きです。

市川:現在のご職業でふだんお客さんに勧めるように、ラバーアイテムを勧めるとしたら、どんな点が売りになりますか?
なんこ:正直これが一番難しい質問ですね(笑) ラバーを着用して普段の動きだけで、エクササイズになる……とか、イベントなど参加される際ドレスとは違ってひときわ目立つ……とかでしょうか(笑) 畳んでもしわにならないので、持ち運びも小さくできる点も加えてみましょうか。見た目からして、異様な装いを容易に想像できてしまうので、「普段とは違う自分になれる」といった点は逆に言わないでおくかもしれません。想像してもらうことで、お客様ご自身の世界を広げていただく。こういったアプローチをしてみるのはいかがでしょうか?

市川:「妻が、どうしてもラバーを着てセックスしてくれません」という相談があったとしたらどのようにお答えしますか?
なんこ:まず、ご自身の願望を一方的に押し付けていないかをお伺いしてその上でお話させていただくと思います。ラバーアイテムはまだまだマニアックな物だと思うのです。マニアックな物をいきなり持ち出されても敬遠されてしまうのは当然でしょうね。未知のものに対する不安は、どなたにでもあり得ることだからです。また通常普段のセックスが、奥様にとって満足できるものであるかどうかも重要です。十分でないならば、そこから変えていかなければなりません。ご自身が普段のセックスで満足できない部分を補うためにラバーフェティシズムを持ち込んで一方的に満足を得るのはいかがなものかと。もしくはアイテムそのものへの嫌悪感というより、ご主人の願望がラバーフェティシズムの世界へ引きずり込もうとしているような魂胆として見えてしまっているのかもしれませんね。引きずり込むのではなく、その世界をほんの少しだけ見てもらう。そのくらいの気持ちで良いのではないでしょうか。
 着てくれそうな雰囲気ならば、喜びを表わしてあげる。着てくれたときには、すぐに飛びつかずに少々大げさなくらいほめてあげる……。「着させればこっちのものだ」という考えはいけませんよね。あくまでも「着てもらうこと」を目指し、その後のセックスはラバーを着た奥様次第であると考えておいたら良いと思います。何においてもそうだとおもうのですが、
自分の性癖であったりフェティシズムというものはあくまでも「自分のもの」であって、相手に押し付けるべきものではないと思うのです。性的なイメージを直結させてしまう薦め方ではなくあくまで着た姿が見たいから、というアプローチでいかがでしょうか?
 また、女性が見て「こんな格好してみたい」と思わせるような姿を私自身目指したいとも思っております。(大それたことを言っちゃった!)まとまりがない回答で申し訳ありませんがお読みいただき、ありがとうございました。

かぼすさんへのインタビュー

さて、これまでにみたとおり、なんこさんが私たちのような完全なラバリストとはちょっと違うことがわかる。ただし、かといってラバーフェティシストではない、ということもいえない。なぜなら、「発見編」で相手のかぼすさんから観察されているように、ラバーを着て興奮するという側面も持っているからだ。
 こんななんこさんは、かぼすさんから見て実際どうなのか。かぼすさんはどう思っているのか。そこで、かぼすさんにもいくつかの質問をしてみた。

市川:彼女がキャットスーツを着てみたいといいだしたのを聞いたときに、どう思いましたか?
かぼす:まず、『キャットスーツ』ってのが分かりませんでした。何か『キャットファイト』がらみのものなのかなぁと。自分がイメージしたのは『コスプレの一種』っていう程度だったんで、着たいってことに対しては、あまり抵抗はなかったです。なんこの要望には、なんでも答えたい!という気持ちが強いもので。

市川:彼女の要望(キャットスーツを着たい)に対する答え(ソリューション?)として、ALT-FETISH.com、SALOへの発注に至った経緯、動機などを教えてください。
かぼす:『キャットスーツ』をキーワードにGoogleで検索しました。ALT-FETISHはなんこから教えてもらっていました。しかし当時はスーツを探しており、ALT-FETISHの品揃えに面食らってしまいまして……。SALOのシンプルさからSALOで注文しました。

市川:キャットスーツ以前は(そして現在もそうでしょうが)パイパンこそあれど、顕著な変態性はなかったおふたりが、ラバースーツをまとうセックスという著しい変態性を帯びたわけです。その前後でのおふたりの性的関係性の変化はありましたでしょうか? 性的関係性のみならず、おふたりの関係においての変化は?
かぼす:顕著な変態性があるとはまったく思って無かったです(^-^; 性的関係でいえば、変化はないと思っています。なんこが『ラバーを纏う』ことは、私の中では一つのプレイであって、我々のSEXを変えるものではないと考えています。変えるものではないと信じたいのかもしれません。この間のこともあったので。普段の関係でも同じで特に変化はないと思います。ただ普段の会話の中で、『次はどう撮ろうか』『次はこれを着て欲しい』等の会話は増えましたね。

市川:かぼすさんがいないときになんこさんがひとりでラバースーツを着て耽溺していたら、ラバーに嫉妬する、ということはあり得ますか?
かぼす:激しく嫉妬するでしょう。嫉妬に狂って、ラバーウェアすべてを処分してしまうかもしれませんwww。やはり、なんこの中で一番でありたいんでしょうねぇ。
(市川註:あくまでふたりは恋愛関係にあるというところ、プラトニックな要素がメインの関係であるところに留意したい。ラバープレイを目的とする機能的な関係だと、決して相手のラバーに嫉妬するということはないだろう。むしろ、相手がラバーでひとり耽っている姿を想像して逆に興奮するというのならあり得る)

市川:裸でするのと、ラバースーツを着た状態でするのとでは、どのように違いますか? 特になんこさんの変化についてはどうですか?
かぼす:まだ2回しかラバーSEXの経験がないので、なんとも言えませんが……。2回とも『俺はなんこのオナニーの道具なんだ』っていう気持ちがありました。もっといえば、なんこの道具に成り下がることを喜んでいました。
 なんこの変化は……、いつもとは逆で、なんこのリードの元、SEXが進行するといった感じでしょうか。なんこ主導で、なんこの好きなように交わる、なんこが私自身を使ってオナニーするという雰囲気でしたね。もう一つ付け加えるなら、『目』が違いますね。自信に満ちた目、私を他の物体と同列に並べて眺める冷たい目をしていますね。

市川:ラバースーツを着たなんこさんは、かぼすさんからみて、心情的立場的にどう変身しましたか。遠い存在、近寄りがたい女王様的存在になるのでしょうか? その場合の恋愛対象としてのなんこさんは、ラバーを脱ぐと戻ってくる感じですか?
かぼす:遠い存在。ん〜、そういう感じは最初のSEXの時以外は感じてませんねぇ。なんこが頑張って、私を見てくれているので、今のところ大丈夫です。ただ、なんこがラバーに心酔しているのも事実でして、それが見える時はすこし寂しい気持ちになります。

市川:今後、エッチするときにラバースーツを着てのプレイを(撮影以外で)したいと思いますか?
かぼす:あまり思いませんねぇ。撮影はどんどんしていきたいと思いますが……。なんことのSEXは、裸が一番だと思っています。ラバースーツを着てのSEXはあくまで前戯の一部ですね。そうあって欲しい、という願いの方が大きいですが。

 女性にとってのラバースーツは、男性のそれとは異なった機能を帯びる。女性が自身の体のなかに密かに持っているもののけを呼びさます機能である。昔の怪談では、「蛇」に化けて男性に復讐する女がよく描かれてきた。女性が極限状態に置かれたときに、パッと蛇になって、男性たちに襲いかかる。古来から私たち日本人、とりわけ男性は、蛇女の怪談を通じて、女性への畏(おそ)れの感情を表出してきたのである。
 ラバースーツをまとったなんこさんのことを詳しく知れば知るほど、なんこさんという女性のなかに棲む「蛇」的なるものを感じて、ふと恐ろしい気分になる。おそらくそれは、私よりもずっと、かぼすさんが感じているはずだ。
 「オルガスム」という言葉を思い出していただきたい。ふたりのセックスではオルガスムのあくなき追究が行われている。じつはこのように人類があからさまにオルガスムを追い求めるようになったのは、1960年代以降になってからのことだという(参考『オルガスムの歴史』ロベール・ミュッシャンブレ)。だからまだどうするのがいちばんオルガスムに達しやすくなるのかとか、オルガスムとはなんなのかといったことが必ずしも周知のものになっていない。まだまだオルガスムには前人未踏の領域があるはずだ。私たちはラバーというツールを通じて、これからも、なんこさんとかぼすさんのオルガスム探求の旅を支援していきたい。


★1 「進化し続けるための記録〜セックスありき どうせなら気持ちよくなりましょ 」
http://blog.livedoor.jp/ishtar_hystera/
★2 フェティッシュジャーナル
http://alt-fetish.cocolog-nifty.com/
★3 ALT-FETISH.com
http://www.alt-fetish.com/
ただし、キャットスーツを販売しているのは、姉妹サイトの「SALO」です。
http://www.salo.jp/

(C)ALT-FETISH.com(C)なんこ、かぼす

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