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ポルノメディア企業について考える
 日本のテレビ番組では、近年素人のリアクションものが幅を利かせている。ガチンコ、未来日記、雷波少年など。確かに面白く、中には心温まる素晴らしいコンテンツに仕上がっているものも多い。しかし、残念ながら、一流とはどういうことかを選別し、見せるメディア本来のパワーが感じられない。
 アメリカの、アダルト・メディア産業は、その点、強いパワーを発揮して世界を席巻している。もちろんアメリカといえば、ハリウッド映画やテレビドラマに見られるように、圧倒的なソフト、コンテンツ製作能力で第三国の追随を許さない。メディアといえばアメリカ、という気すらしてくる。そのアメリカの、巨大アダルトメディア企業であるプレイボーイ社のパワーと迫力の源泉を、「プレイメイトのすべて」というテーマでつづった今月のプレイボーイの記事を題材に、表題について考える。
 プレイボーイは、ヒュー・ヘフナーという天才的パブリッシャー(編集・発行人)が一代で築きあげた壮大なアダルト・メディア企業である。私は、最初期の、二十代のころのヒュー・ヘフナーが狭い自宅の一室の小さな机にタイプライターを置いて、せっせと仕事している様子を撮した一葉の白黒写真を見たことがある(今月のプレイボーイにも掲載されている、コレはまさに、20世紀的写真家も?!)。彼は今もってなお、プレイボーイ社の帝王として実権を振るっている。もちろん、暮らしはカリフォルニアの豪邸で悠々自適。まさに典型的なアメリカン・ドリームといえる。
 今やカリスマ的存在となったヒュー・ヘフナーのプレイボーイへは、毎月数千通のプレイメイト志願者の履歴書が寄せられる。選ばれるのは毎月一人、競争率は実に数千倍にもなる。
 選ばれる理由について、この特集を寄稿したベイプレイボーイ社写真部門ディレクター、ゲイリー・コールはいう。
「若さと整ったルックス、透き通った肌、美しい歯並び、大きな目。美と健康の象徴たりうること。定期的に体を鍛えていること。きちんとした食生活をしていること。タバコは吸わないこと。放漫なバストとくびれたウエストに均整のとれたヒップという魅惑的な肉体であること。さらに(中略)圧倒的に惹きつける性的なオーラをカメラの向こうから発」せられることが、プレイメイトの資格なのだ。書類審査をくぐり抜け、カメラテストを通過し、最後にカリフォルニアの豪邸のヒュー・ヘフナーがオーケーを出して初めて、彼女(一介の、町のカワイコちゃん)は「プレイメイト」に選ばれる。
 多くの読者の支持を得るためには、モデルの想像を絶する魅力もさることながら、さらに様々な工夫が必要である。私は、自らファティーグというフェティッシュビジュアルマガジンを製作してヒュー・ヘフナーを気取ってみたが、去年、2号だけ出して休刊した。次のゲイリー・コールの記事──撮影から印刷までのプロセス──を読めば、ポッと出の変態エディターがそう簡単には「ヘフナー」になれないことが分かる。
「センターフォールドは通称8×10(エイト・バイ・テン)」と呼ばれる大判カメラで撮影される。この最大サイズのフィルムを使えば、雑誌用に印刷したときに最高の画質が得られるからだ。まずカメラマンは同サイズのポラロイドカメラを使ってポーズ決めや光の調整を行う。8×10のフィルムを失敗せずに露光させるにはかなりの光量が必要なので、無数のパワーパックとフラッシュヘッドの位置にもかなり気を配らねばならない。撮影は1日に2回、最低3日間にわたって行われる。一度の撮影で使用されるフィルムは40シート。
フィルムはすぐに現像され、カメラマンと制作主任によって細部まで入念にチェックされる。それから光やポーズ、メイク、アクセサリーを修正する。そして最後の仕事がモデルの表情をいかに引き出すかである。モデルの気持ちをうまくのせることができたとき、初めて輝くようにビビットな写真が生まれるのだ。」そして、この後雑誌に綴じ込まれるときと同じ状態、同じ色、サイズでプリントされて出来上がったものが、フュー・ヘフナーの最終チェックを受ける。驚くべきことに、この時点で再撮が命じられることは「しばしば」だという。再撮とは、セットから何からすべて最初から変えてやり直しということである。
 プレイメイトという専属モデルを毎年毎年新規に契約するのも、8×10の再撮も、何もかも莫大な金がかかる。しかし、プレイボーイ社が確実に投資を回収し、利益を上げ続けられるのは、ヒュー・ヘフナーの並はずれて高いIQにその秘密があるのかも知れない。彼は27歳の時(1953年)に、プレイボーイを創刊している。2001.7.4
 
 
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