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ディディの物語 ラバープレイ体験告白編

 はかない生命の終焉と、一陣の風が銀杏の梢のなかで出会うと、たちまち私に金色のシャワーが降り注ぐ。私はその日、仕事の打ち合わせのために、あるホテルへと急いでいた。パリの晩秋の週末は、とても寒かった。太陽は暮れかけ、肩をすぼめて歩く人たちが私を追い抜いていく。ホテルに着くと照明はすでにほの暗く落とされ、夜のそれぞれの物語が始まることを教えている。ビロードの絨毯が天井の豪華なシャンデリアの明かりに照らされている。コン・シェルジェから、部屋の鍵を受け取ったとき、わたしは不意にいつもの至福を覚えるのだった。部屋に着くまで、このとっておきのスーツケースを開けるのが待ちきれないでウズウズした。パリのようなロマンティックな街では、ひとは誰でも期待に胸を高まらせる。
 部屋の中に入って、スーツケースを開けた瞬間、私の臭覚を甘美な匂いが満たした。スーツケースに満載されたラバーの衣装たちをちらっと見るだけでもう私の体中の血管を走る血が熱く燃え、股間がジンジンとうずき始めてしまう。ここでオナニーをするべきか、しないべきか? 自らの胸のうちに答えを訊くまでもなく、私はラバーマスクをつかんで頭にかぶりはじめていた。マスクを後ろでしっかりとジッパーで固定し、全身の皮膚に猛烈に吸い付くほどきついラバーキャットスーツを着込んで鏡の前に立ちつくした。鏡に映った自分はいまやラバーづくめのセックスマシーンに変身していて、まるで別の生き物、怪物であり、変態そのものといったありさまである。そんなとてつもなくいやらしい姿になって欲情している自分を眺めるうちに、もはや胸の高まりは押さえきれないくらいになっていた。私はベットに横たわり、もうすっかりグショグショになってしまったプッシーを愛撫する。片方の手で乳房を固くつかんでははなす。身体は愛撫に鋭敏に反応し、私はブルブルと震えながら瞬く間にオーガズムに達してしまった。
 打ち合わせが始まる午後8時少し前、私は着替えを済ませて階下のレストランへ降りていった。打ち合わせの相手はスーツを着てネクタイを締めた男性だった。素敵だけどありきたりなファッション、そう思った。
 退屈のあまり私は彼が何をしゃべっているのか上の空だった。でも途中、彼がトイレに席を立つときに、ズボンの股間を膨らませているのを見つけた。それでハッとしてコーヒーをお代わりして、想像した。彼は、あんなにペニスを大きくして、何をするつもりだろう。もしかして、彼はホモかも知れない。いや、ラバリストかも……。もっとも都合のいい空想に浸りながら、いつしか私は、この巡り合わせは素晴らしい運命のもたらしたものだと確信するようになった。私の心のなかで作り出された妄想は、まるでポルノ映画のようだった。はいているラバーパンツが股間の秘部へ静かに食い込み、私の愛液が止め処なく流れ出はじめた。
 彼が戻って来たとき、私はこのつまらないビジネスの打ち合わせをとっとと切り上げて、もっと興味深いことに時間を使うおうと彼に提案することにした。「さてと。」私は言った。「あなたがスーツの下に何を着ているかを言わないと、このビジネスの話はなしにさせてちょうだい」彼は気まずそうにデザートのクリームブルレをバターナイフでいじくっていた。「私を見て!」と私が言うと、ようやく彼の目は私をとらえた。「何も恥ずかしがったり、こわがることはないわよ。私の知っている限り、男は昔も今も、何らかのエッチな秘密を持っているもの。私が知りたいと思うのは、あなたの秘密」
 彼は弱々しく言った。「じつは、自分はラバーにハマってるんだ」
 私は自分の耳を疑った。ついさっきまで私はまさにそのラバー狂いの淫乱変態女だったのだ。私は感情を押し殺し、仕事モードの声で冷静に言い放った。「あーそう。ラバーねぇ。面白いんじゃない? 私の部屋は14のB。30分後に来なさい。私を見て。30分後よ。いいわね?」
 彼は恥ずかしさからか、クリームブルレに目を落とし、小さな男の子みたいに自信のなさそうな声で私の命令にこたえた。「イエス、ミストレス」「部屋に上がってくるときに、これを着てきなさい」こんな場合に備えて持っていたラバーコスチュームが入った包みをハンドバックから取り出し、彼に手渡した。エレベーターが14階まで私を運ぶのに、まるで数日かかったんじゃないかと思うほど遅く感じた。やっとの思いでエレベーターを降りて、部屋に猛ダッシュで入り、仕事着をかなぐり捨て、さっき脱いだままになっていたキャットスーツをふたたび身体にまとった。入り口のドアからクローゼットまで、シャネルの香りの小道が出来て部屋を満たした。キャットスーツのジッパーを閉めて、コルセットは堪えられるぎりぎりまできつく締めた。長いラバーの長手袋をはめる。ぱちんと肩近くで留めることが出来るようになっている。ラバーのストッキングは股間近くのガーターで所定の位置に留めた。ラバーコスチュームを一つ一つ着ている最中も、私は自分の理性をかろうじて保っている有り様だった。呼吸は短く、興奮のあまり「う、ああ、ん」とあえぎ声がつい漏れてしまう。15センチもあるピンヒールを床に鋭く屹立させる密着型のラバーロングブーツに足を滑り込ませる瞬間は、私がもっとも好きなときだ。ゆっくりとジッパーをあげて、ブーツがラバーの足を包み込んでいく感触を楽しむ。ジーッ。そしてブーツを穿くとき以上に素晴らしいひとときがやってくる。ラバーマスクとヘルメットを装着する。後ろのジッパーによって頭にピッタリときつく固定されたラバーマスクのマウスピースから、私の唇がぷるんと飛び出るのを見ると否応にも興奮してくる。そして厚いラバーで出来たオープンフェイスのヘルメットをかぶって、ラバーのキャットスーツのハイネックのふちとジッパーで固定すれば、完全密閉スタイルができあがる。私は頭の先からつま先まで、黒いラバーに完全に包まれている。すっかり変身を終えて鏡の前に立ち、頭や胸をゆっくりと愛撫しながら今夜の犠牲者の到来を待った。
 ラバー越しに伝わってくる自分の愛撫の感覚をゆっくりと味わっていると、控えめなドアノックの音がして我に返った。ドアを開けると、彼が立っていた。グレーのスーツ、ネクタイ、シャツ、そして目の部分がジッパーで閉められたラバーマスクをかぶっている。なんとゴージャスな姿だろう! 私は彼のグレーのネクタイをひっつかんで部屋に引き入れ、全身が映る鏡の前に誘った。ネクタイを引っ張って彼を椅子に座らせて、こう言い放ってやった。「お楽しみの時間よ、ラバーの豚野郎!」
 私が彼の後ろに立つと、高いヒールをはいた私の姿はハッとするほど堂々たるミストレスとして君臨した。きっと彼は何も見えていないから恐怖感を抱いているに違いない。彼のラバーフードをかぶった頭を愛撫してみる。すると彼はすぐに反応した。私への絶対的服従の気持ちが彼のなかで芽生えはじめている。ふるえてうめき声を発しながらも、彼はなされるがままである。彼のラバーマスクの表面に、私は舌を這わせた。そして彼の唇に微かに触れる。彼が私にキスしようとしたので、押し戻し、「焦らないで。奴隷ちゃん。時間はいくらでもあるのよ。いまこそ、その薄汚い変態根性を私の前で丸裸にしてやるわ。」と言ってやる。私は彼のネクタイを緩めて、シャツのボタンを外し、ベルトを私なりのやり方で外す。彼は私を失望させなかった。彼はラバーストッキングとサスペンダーをつけているだけじゃなく、ラバーのブリーフを穿いていた。ペニスは前の穴から飛び出していたが、これもラバーで被われていた。私は自分の幸運を信じられなかった。ラバーに覆われた愛しいディック(ペニス)が、私のものになるんだ。「あーら、この薄汚い尻軽女。こんなところに何をつけているのかしら?」 こう言って、私は彼の亀頭を指でつついた。ピン、ピンと弾くと、それに呼応するようにペニスが固くなる。私はもはや自分を抑えられなくなった。キャットスーツの股の部分のジッパーを破るように開けて、陰毛を剃り上げ感度を増したヴァギナを外に露出させた。愛液をボタボタと垂らしながら、彼にまたがって、ラバーのペニスを私のなかへ挿入した。ラバーペニスは私の性器の奥深くにまで、しっかりと滑り込んだ。彼は興奮であえぎながら私の巨大な乳房を揉みしだき、乳首を勃起させる。彼がイキそうになったので、私は彼の両手首をしっかりと彼の両脇へ押さえつけて、さっと立ち上がった。彼の肥大したラバーペニスは私の愛液でヌメヌメ黒光りしていた。
 こんなに興奮しやすい子豚は、調教しなければならない。私は彼の片腕を椅子の背に彼のベルトで縛り付けた。彼はうめき、泣きべそをかいていたけれども、相変わらずコックは勃起していた。
「飲み物がいるようね。豚野郎。私がスペシャルカクテルを準備するあいだ、そこに座っていなさい」
 私はバスルームへ行って、小便を貯めることができる私のパンツにチューブを取り付けた。ワインと、コーヒーを飲んで、セックスもした私の膀胱は、もう爆発寸前だった。彼の喉元に放尿するのが待ちきれない。私は彼のところへ戻った。
「欲しい?」「オー、イェス。お願いです、神様」
 私は彼の胸をブーツで挟むようにして立ち、ハイヒールの先で彼の無防備な裸の肌をつついて5秒ほど楽しんだ。私は満身の力を込めてブーツの先で彼の胸を押して、彼の背中が背もたれに着くようにした。私は彼の上にまたがり、残酷なよろこびに悶えながら、チューブを彼の口へ向けた。「大きく口を開きなさい、とっておきのものをあげるわ」膀胱の緊張を緩めた刹那、小便の激流がチューブを通って彼の顔めがけて流れ出した。かわいそうな犠牲者は、歯にあたった小便が周囲にはねとぶのもお構いなしに、ごくごくと飲んだ。びちゃびちゃいう音と、ゴクンと彼が飲み込む音は、風変わりな音楽のように私の耳には聞こえた。私の小汚い小便野郎は、いまや私の黄金のジュースを口いっぱいにしながら必死になって片手を激しく動かしてマスターベーションをし始めた。彼は悲鳴に近い声をあげながら、ラバーのペニスの先から精液をだくだくと発射した。最後の一滴を飲み終えると、彼の射精も終わった。
 私は、あえぎ声を漏らし、へとへとになったこの豚野郎を見下ろしながら、ヤツの視界を閉ざしているマスクの目の部分のジッパーを開ける前に少し休ませてやろうと思い椅子に真っ直ぐ座らせた。目のジッパーを、光にすぐになれるよう手で覆い隠しながら開けてやる。
 彼は自分の目を疑った。そこには最高に美しい、ビザールラバーの女神が、お尻に手をあてがって立っていた。そびえ立つ、黒光りしたボディー。夢を見ているかのような幻影。不吉なそれでいてフェミニンな表情。私は優しく、エッチな声をわざと出して、彼に訊いた。「どう?気に入った?」「オー、マイゴッド」
 彼の口は開きっぱなしになっている。
「私をよろこばせてくれる?」
「あなた様のためならなんでもします! なんでも!」
 私は三歩後ろに下がり、ベッドの端に腰掛けた。
「四つん這いでここまでおいで」
 私はウェストバンドを外して、小便のたまるパンツを脱ぎ、それをブーツを穿いた足下へおいた。私が股を広げると、ラバーで頭を覆われた奴隷が近づいてきた。よく調教された猟犬のように、彼は鼻先をひくつかせながらプッシー(女性器)と小便から漂う気品のある香りをかいで、次の命令を待っている。
「なめなさい」
 彼の舌は最初、私のプッシーの下を攻めた。それからゆっくりと割れ目へと這わせ、クリトリスをなめた。そしてビショビショに濡れたヴァギナの上までやってきた。賢い犬のように、彼は何度も何度もヴァギナを攻めた。「もっと、もっと激しく、早くっ」 私のトリップがはじまった。「今度はクリトリスよ! 強く吸って!」
 私は渦巻きに翻弄されるかのように身体がコントロールを失い、悲鳴を上げた。それはそれまでに未体験の、最強で最大のオーガズムだった。大地震が起こっているような錯覚に襲われた刹那、私は背中を震わせながらのけぞって、イった。
 目を開けると、一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。しばらくたって、私はほの暗い、不気味なほど静かな部屋にいた。「無事に地球に降り立ったんだわ」 パリのど真ん中のホテルの一室の、ふわふわのキングサイズベッドの上だった。
 これが私の決して忘れ得ぬ「トリップ」の一部始終である。

2001.3.18

 
 
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